2019年8月2日金曜日

IASB、のれん償却の再導入案は否決。その背景は?

のれんの償却を復活させるべきか。IASB内でもこの1年くらいの間に大きく揺れた話題でしたが、IFRS3号「企業結合」の改訂に関連した今回のプロジェクトでは、

「のれんの償却を再導入しない」

という結論が出されました。

2019年6月のIASB会議にて、ディスカッション・ペーパー(DP)での提案内容の採択が行われ、のれんの償却については、長く白熱した議論が展開されました。

プロジェクトでは、現行の減損テストの枠組みでは減損損失の認識が「少なすぎる、遅すぎる(too little, too late)」ことへの対処として、のれんの減損テストを改善する議論がずっと継続していました。その議論では、のれんの償却が積極的に取り上げられている印象はありませんでした。

しかし、現行の枠組みを大きく変更する新アプローチ導入を断念する事態を経て、のれんの償却導入が「苦肉の策」として急浮上し、議論の流れが変わっていきました。結局、のれんの減損テストを改善することができない以上、自動的な償却処理であってものれんの残高を減らす処理を適用することで、巨額の減損損失を回避できるではないか。償却処理に一定の役割を見出す意見が見直されるようになってきました。

議論の最終局面では、のれんの性質をどのように捉えるかという問題に突き当たる指摘が多かったです。のれんは、複雑な性質を有するものの、多くの場合は償却資産として扱うべきであるとする意見や、のれんは擬制的な資産に過ぎないという見解も聞かれ、通常の審議ではあまり見られないような極端な意見の割れ方をしていました。

それでも、議論が収斂されていくにつれ、

「のれんは無限に価値が存続するわけはなく、ほとんどの場合、時間の経過と共に価値は減少していくと考えられるが、耐用年数は恣意的にならざるを得ない」

という見解が共有されていったようでした。

最後の投票では、償却の再導入に反対が8票、賛成が6票となり、僅差での否決となりました。

この決定を受けて、DPでは、のれんの償却の再導入に対する賛成と反対の両論を併記したうえで、再導入を行わない提案が行われることになります。

会議では、IASBがリーダーシップをとり、DPでは自己の立場を明確にした提案を行うべきという考えのもと決定が下されました。審議期間は長くなりましたが、その他の提案事項も含め、ようやくIASBの意見がまとまったことになります。DPは2019年末近辺に公表される予定ですが、IASBの提案に対し、さまざまな意見が寄せられるのではないかと思います。

イージフ 野口