2019年7月5日金曜日

IASB、のれんについて年次の減損テスト軽減を検討

IASBが現在取り組んでいるのれんと減損プロジェクトでは、企業結合に関する

「より適切な開示」

がひとつ大きな目的として掲げられています。しかしそれだけではなく、企業からの要望であるのれんの減損テストの手続軽減も取り下げられてはおらず、議論が続けられています。

どれだけ軽減されるのか、プロジェクト当初の提案に比べると範囲はだいぶ縮小した印象ですが、年次で強制されているのれんの減損テストの実施を免除するという提案は、影響が大きいところであり、注目されています。

2019年5月のIASB会議では、この年次の減損テストが取り上げられました。この時のスタッフの提案は、年次ののれんの減損テストを免除し、減損の兆候のあるときにのみ減損テストを行う、というものです。

その提案に対し、会議では慎重な意見が相次いでいました。

これまでプロジェクトでは、減損損失の認識が「少なすぎる、遅すぎる(too little, too late)」に対処しようとしてきたのに、年次の減損テストを免除してしまっては逆効果であり、簡素化すべきでないという反対意見も根強い印象でした。

しかし、むやみに手続を厳格化することも、望ましいことではありません。議長は、実際に直面している問題は「遅すぎるうえに、巨額になる (too late, then a lot)」と指摘し、簡素化により減損テストの有効性を悪化させるかは簡単に判断できないという認識を共有していました。

議論で特に興味深かったのは、米国基準についての言及が目立ったことです。米国基準では2011年の修正で、減損の兆候の判定のみで減損テストを省略できる任意規定が設けられました。この規定を選択すると、企業は定性的評価により、のれんの公正価値が簿価を下回る可能性が50%超であると判断した場合、減損テストを省略することができます。この規定に関心を持ち、参考にすべきと考える理事は多いようでした。

ただし、米国基準における減損の兆候はIFRSと似ているものの、内容は異なると考えられます。米国基準では、可能性が50%超であるかという基準がありますが、IFRSではのれんが減損している可能性を示す兆候の有無を評価します。また、のれんの簿価と比較する価値がIFRSでは使用価値であるのに対し、米国基準では公正価値である点など、米国基準の規定を参考にする際には留意しなくてはなりません。

のれんの減損テストに関する改訂については、個々の内容をそれぞれ検討するのでは不十分であり、一つのパッケージとして検討する必要があり、この問題を単体で扱うべきではないという指摘もなされました。

議長からはこの問題はIASBの信頼に関わる非常に重要な問題であるという発言もあり、IASBは慎重な判断が求められています。しかし、冒頭でも触れたように、手続の簡素化については当初よりもだいぶ範囲が狭まってしまっていて、現在の提案については基本的に実現を目指して検討が進められるのではないかと思います。6月の会議ではどの予備的見解をディスカッション・ペーパーに含めるべきかを判断し、ディスカッション・ペーパーの公表は2019年後半に予定されています。


イージフ  野口

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