2019年6月5日水曜日

のれんと減損、新しい開示情報の検討に着手

IASBが進めているのれんと減損のプロジェクト、大きな方針転換があってから一時審議は中断していましたが、2019年4月のIASB会議から審議が再開されています。

のれんの話については注目している方も多いと思いますが、しばらく時間があいてしまったので、これまでの審議を簡単におさらいしておきたいと思います。

このプロジェクトで一番重要視されていた問題はのれんの減損テストでした。投資家からは「(減損損失の認識が)少なすぎる、遅すぎる」という批判があり、もっと減損テストを効果的なものにしてほしいという要求がありました。一方、企業からは減損テストの手続が複雑でありコストがかかりすぎるため、もっと減損テストを簡略化してほしいという全く逆の要望がありました。

この相反する要求の間で、バランスのとれた、有効な解決策を見つけるべく、長い議論が続けらてきましたが、結局、減損テスト自体を改善することは無理、という結論になりました。2018年7月の会議では、減損テストの有効性の向上については検討を行わないことが決定しています。なので、今後も減損テスト自体は存続することになります。

しかし、これだけ減損テストに問題があるのに何も打開策がないというのは示しがつきません。そこでIASBは、代替案を提示することにしました。

減損テストを通して投資家が知りたいと思っている情報を別の形で提供されるよう、開示を充実させるというアイディアです。

のれんの減損を通じて投資家が知りたい情報とは、端的には、企業結合の成否を事後的に評価するための情報と考えられています。

本格的な審議はこれからで、まだ採用の是非は問われていないのですが、以下のような情報開示が必要なのではないかとされています。


企業結合が発生した報告年度における追加開示項目


  • 企業結合の実行の根拠となる企業の戦略(企業の戦略と買収取引の関連性についての説明等)
  • 取得企業と非取得企業のシナジーに関する記述(シナジーの説明、金額(または金額の幅)とシナジーを生じさせるために必要なコストの金額(または金額の幅))
  • 取得日に認識した被取得企業の主な資産および負債の金額(財務活動による負債および年金負債等は区分する)
  • 取得日以降、取得企業の財務諸表に含まれている被取得企業の収益、営業利益(企業の取得に関連する取引および統合の費用を除く)および営業活動によるキャッシュ・フローの金額
  • 企業結合の主要な目的(企業結合を実行した結果、経営者が到達することを期待している目標)
  • 将来の報告年度において、企業結合の主要な目的の到達度を評価するために経営陣が使用する予定の評価指標


企業結合が発生した報告年度とその後少なくとも2報告年度における追加開示項目


  • 経営陣が使用する評価指標の実績値


実際には、多くの企業は現状でも要求される情報量の多さに不満を感じているという状況なのですが、IASBはより具体的な目的を設定し、投資家はどんな情報がどういう理由で必要なのか説明をすることで、企業に理解を促す方針となっています。

日本で話題になっていたのれんの償却の再導入も、今後の検討内容の一つになっています。

のれんの償却については、これまでの審議では減損テストの改善という、上記の議論の中で検討されてきていました。その議論の中では「償却処理は有効性には結びつくはずがない!」という意見が強く、審議を見ていても採用される余地を感じさせませんでした。

しかし現在は、コストの削減という観点で取り上げられています。ただ、手続きの簡素化だけでは説得力に欠けるので、「償却処理によるのれん残高の減少により、のれんの減損へのプレッシャーを軽減することができる」といった他の長所も紹介されています。

米国基準との関係もあり議論内の様子だけで判断することはできませんが、のれんの償却も過去の審議よりは真剣に取り上げれらるのではないかと思います。

まだ具体的な決定事項がない段階の検討内容ですが、議論の方向性も含め幅広く紹介していきたいと思います。


イージフ  野口