2019年2月4日月曜日

IFRS17号「保険契約」修正が必要か。適用は2022年に延期

IFRS17号「保険契約」は2017年5月に公表され、当初は2021年の適用を予定していましたが、実際に適用準備に着手した企業から、基準自体の問題も報告されています。

それらの報告をもとに、IASBが修正の要否を検討する問題点は25項目になりました。IASBでは、問題の具体的な検討に先立って、適用時期を1年延期し、2022年から適用する決定をしています。個別の問題への対応よりも適用時期が不明な状況を長引かせてしまうことは、企業に不利益となることを配慮した決定です。

その後の審議(2018年12月IASB会議)から、個別の問題の審議が始まっています。25項目のうち本当に基準の行うことになるものは少ないと思いますが、この時の会議では基準を修正する決定がなされています。

修正は保険契約の集約単位に関係するもので、保険契約資産および負債の表示を契約グループ単位ではなく、ポートフォリオ単位で行うというものです。

新基準では、保険契約に一般モデルであるビルディング・ブロック・アプローチ(BBA)を適用します。一般モデルは、契約グループ単位での適用が要求されています。ポートフォリオは類似のリスクで一括して管理される契約で構成される単位ですが、それに対して契約グループは、ポートフォリオより下位の単位で、不利な契約や発行日が1年以上離れている契約はグループを分ける必要があり、さらに細分化することもできます。

IFRS17号では、BBAによる測定、認識方法に整合した表示を行うために、保険契約グループごとに保険契約資産および負債を表示することを要求していました。そのため、将来サービスに関連する履行キャッシュ・フローと過去の発生保険金に係る負債を、グループごとに割り振り、これらの合計金額を保険契約の帳簿価額として、資産または負債を表示することが必要でした。

実際に適用準備を進めている企業からは、従来の実務ではこのようなキャッシュ・フローをグループ単位で把握しておらず、対応には非常にコストがかかるという意見が多く寄せられました。

また、このようなキャッシュ・フローの紐付けによって表示される資産や負債は、キャッシュ・フローのタイミングによって決定されるものであり、グループよりもより大きな単位であるポートフォリオ単位での表示が適当であるとする意見もあります。

審議では、BBAの適用が保険契約グループ単位で行うのにも関わらず、表示のみポートフォリオ単位で行うのは理論的ではなく、概念フレームワークにも反するものだという強い反対意見がありました。このような理論的な不整合が生じることに異論を唱える声はありませんでしたが、キャッシュ・フローをグループ単位に把握するための実務対応のコストは大きな負担となり、そこまでのコストをかけるべきではないという意見が大勢でした。

理論的な正当性はないのですが、実務的な負担に配慮した決定となりました。

基準書の修正の要否については検討が継続される予定で、全ての検討を完了した後、修正事項全体のコストと便益のバランスを確認することとなっています。今回の決定のようなコストへの配慮が重視されていることに注意して、IASBの動向を理解しておく必要があると思います。

イージフ  野口