2018年12月3日月曜日

IFRS、「のれん費用化」の可能性を探る

国際会計基準がのれんの費用化(償却処理)導入を検討していることについて、新聞報道などもあったので、ご存知の方も多いと思います。しかし、新しい情報が(新聞報道時点の情報もすでに古いものでしたし)伝えられることは少なく、フォローできている方は少ないのではないかと思います。

ここでは、2018年11月時点でのIASBでの審議の状況を紹介しておきたいと思います。

現行のIFRSでは、のれんの償却処理は認められておらず、企業結合に関する規定の全般の見直しを進めていたIASB会議でも、ずっと「償却はありえない」という論調でした。

1番の理由は、のれんの償却額やのれん残高に意味がないから、というもので、のれんの費用処理金額は「企業結合の事後的評価」に資するものであるべきだと考えられていました。ですから、のれんの減損テストで「企業結合がうまくいっていない」ことを減損損失として認識する方法が採用されてきたわけです。

しかし、のれんが時間の経過とともに価値が減っていく、という考え方は実態とかけ離れているとは言い切れず、企業買収のタイプによってはそのようなのれんが発生している場合もあるかもしれない、という認識も共有されてきましたが、そのような場合においても、のれんの償却期間の設定が問題となります。償却期間を客観的に決定することは不可能であって、恣意的な期間が採用されるのであれば、のれんの償却は行うべきではない、と結論づけられていました。

ずっとこのような考え方が主流で、今回の企業結合に関する一連の検討でも同じような議論が繰り返され、のれんの償却は棄却されていましたが、今度公表予定のディスカッション・ペーパー(DP)では、のれんの償却が1つの提案として盛り込まれることになっています。

今までと同じ議論を行うのであれば、DPに含められたとしても、採用される可能性は非常に低いものだと思います。特にこの提案に関しては、議長が率先して否定的な発言を繰り返していることもあり、「無理」な印象がかなり強かったです。しかし、今回は「もしかしたら」があるかもしれない、と感じさせるようなIASB会議での議論に変化が見えています(2018年10月のIASB会議)。

DPでは、のれんの事後的処理の簡素化という観点から提案を行うことにしており、そのことに積極的な意義を見出そうとする理事の意見が多く出されていました。

今回のDPで中心となる提案は

「企業結合の事後的評価に資する情報は、のれんの減損テストではなく、開示の充実で提供する」

ということです。

当初IASBでは、のれんの減損テストを厳格化するなどして、より正確な評価を行うことを目指していましたが、あまりにも困難が多いため挫折しました。その代替案として、採用されたのが開示情報の充実でした。

企業結合の評価に必要な情報が、開示の充実によって満たされるのであれば、のれんの事後的処理と企業結合の評価を緻密な形で結びついている必要はないと考えられます。それならば、のれんを償却処理する簡素化に一定の合理性があるのではないかと積極的に肯定していこうとする意見が多く出されていました。もちろん、DPに対してどのような意見が寄せられるかが問題なのですが、「償却処理が採用されるかもしれない」と思わせる雰囲気が会議にありました。私個人としてはちょっと驚きでした。

しかし、もし償却処理が支持されたとしても、償却期間の問題を避けることはできません。まだIASB会議でも踏み込んだ検討はなされていませんが、今後議論を呼ぶことになるのではないかと思います。


イージフ  野口