2018年6月4日月曜日

企業結合、のれんと識別可能な無形資産の問題

こんにちは。イージフ の野口です。現在IASBが取り組んでいるのれんと減損のプロジェクトでは、のれんの算定から事後的な手続き、減損損失の認識に至るまで、さまざまな観点から現行基準の再検討が行われてきました。のれんの償却の要否、減損手続き自体の見直しも含めて根本からの問い直す姿勢で取り組まれてきたように思います。

財務諸表作成者である企業からみると企業結合時ののれんの算定、のれんの減損テストなど、のれんにまつわる規定は煩雑であるという声が根強くあります。一方、投資家を中心とする財務諸表作成者から見ると、突然巨額の減損損失が認識され企業の業績が一気に悪化するという場面に直面することが少なくなく、もっと早期に適切な額の減損損失が認識できたのではないかという、疑問が絶えません。

この両者からの相反する要望に応えるため、どのようにバランスをとるのか、ということが試されていたように思います。審議全体からは、現状では、減損という制度自体を維持するのが一番妥当であり、手続きも簡素化よりも有効性を重視した方向での改訂になったと言う印象です。

のれんの減損テストに関しては、

減損テストにヘッドルーム・アプローチを導入する

という大きな手続きの変更がなされることになりましたが、そのほかの変更は小さなものに限られ、手続きの簡素化につながる主な改訂は以下の2点のみです。

  • 使用価値の計算から、将来のリストラクチャリングまたは将来の拡張から発生すると見込まれるキャッシュ・フローを除外するという制約の削除
  • 使用価値を計算する際に税引き前のインプットを使用するという要求の削除
のれんの償却や減損テストのタイミングなどについて変更をしないことになりました。

ここでは、のれんの範囲についてIASB会議での議論を紹介したいと思います(主に2018年4月のIASB会議の内容になります)。

のれんの範囲については、現行基準では、企業結合時に識別可能な無形資産を認識することが要求されていますが、無形資産の識別にはコストがかかるという企業からの意見がありました。そこで審議では、耐用年数を確定できない無形資産をのれんの金額に含めることが提案されていました。

この提案にはさまざまな意見が交わされたのですがが、従来通り、識別可能な無形資産をのれんから分離して認識すべきという意見が強く、無形資産をのれんに含める検討は今後継続しないことが決定しました。

提案に対しては、耐用年数を確定できない無形資産に対象を限定しているため大きな影響が生じないという見方もありました。企業からの要望を鑑みて、コスト軽減効果を重視する賛成意見もあったわけですが、全体としては否定的な意見の方が多数でした。のれんに他の無形資産も含まれ、のれんの中身が「ブラックボックス」となることで、減損テストの有効性に疑念を生じるといった、問題点が指摘されました。

この審議をもって主要な事項の審議が終わりました。のれんと減損に関しては、検討範囲は広かったものの、改訂につながった提案は少ない結果になったと思います。今回の改訂の目玉は、新アプローチであるヘッドルーム・アプローチです。改訂する内容が少ないこともあり、IASBでは次のステップとしてディスカッション・ペーパーを省略し、公開草案の公表を念頭に置いて審議を継続しています(公開草案を作成するという最終的な決定はまだありません)。

今後はヘッドルーム・アプローチがどのように規定されるのか、フォローしておくことが重要になると思います。


イージフ  野口