2018年2月5日月曜日

IFRSのれんの償却処理、復活はなし。では、どう変わるのか?

こんにちは。今回はのれんの減損について、最近の議論を紹介したいと思います。

IFRS3号「企業結合」は適用後レビューの結果を受け、改訂されることになっています。現行基準に対する批判、不満はいろいろありましたが、のれんに関する問題が多く挙がりました。特に批判が多かったのが、のれんの事後的な処理で、現行の減損テストに対する不満は投資家からも企業からも多く寄せられていました。一番多い批判は、減損テストにより認識される減損損失が「少なすぎる、遅すぎる」というものです。

減損損失を正確に認識するため減損テストを厳格化すれば、手続きは煩雑になります。現行手続きでさえ複雑すぎるという批判がある中で、より多くの負担を求めるのもなかなか難しいことです。

解決策を探る議論が続けられていましたが、2017年12月のIASB会議で現実的に以下の3つの解決策から選択するしかない、という認識が共有されました。

  • 問題への対応を行わない
  • のれんの償却復活を検討する
  • ヘッドルーム・アプローチの導入を検討する

利害関係者から強い要請がある中で、何の対応もしないということはありえない、ということについては誰も異論がありません。そして、のれんの償却についても却下されました。最大の理由は、自動的に計算されるのれんの償却額が何の意味を持たず、有用な情報になり得ないと、多くの投資家が考えていることです。日本を中心にのれんの償却に合理性を認める意見はありましたが、投資家からの指摘を覆す新しい論拠を示されなかった、というのがIASBの見解でした。

IASBは本格的にヘッドルーム・アプローチの検討を進めることを決定しました。

現在検討されているヘッドルーム・アプローチとは、資産(または資金生成単位)の回収可能価額に自己創設のれん等の財務諸表上認識されていない資産の価値が含まれていることに注目するものです。現行の減損テストに「ヘッドルーム」を考慮することで、隠されていた減損損失を認識できると考えます。

ヘッドルーム・アプローチでは、資金生成単位の回収可能価額が財務諸表上認識されている純資産の帳簿価額とのれんの帳簿価額の合計金額を上回る金額を、未認識のヘッドルームと呼びます。これは、自己創設のれん等財務諸表上で認識されることのない資産等の価値が含まれていると考えられます。このような資産の価値は回収可能価額には含まれていると考えられますが、帳簿価額には含まれていません。この差は減損損失の過小評価につながっている、というのがこのアプローチの考え方です。

例で考えたいと思います。

企業Xが毎期末にのれんの減損テストを行います。企業Xは資金生成単位Zを保有し、過去の企業結合で発生したのれんを有しています。2期間における資金生成単位Zの回収可能価額と帳簿価額は以下のとおりとします。金額の単位はすべてCUです。

帳簿価額;                 T0期    T1期
取得したのれん                                              *100       #100
その他識別された資産(負債を差し引く)     525        510
回収可能価額                                                 730        695

*T0期における減損認識後
#T1期における減損認識前

未認識のヘッドルームは

回収可能価額–帳簿価額

なので、T0期の未認識のヘッドルームは

730-(525+100)=105

となります。

T1期の減損テストにヘッドルーム・アプローチを適用する場合、
このT0期末に計算した未認識のヘッドルームを帳簿価額に加えた金額と、回収可能価額と比較します。

T1期の減損テスト
(帳簿価額+未認識のヘッドルーム)-回収可能価額=減損損失 

(100+510+105)-695=20

のれんも未認識のヘッドルームも差額でしか求められないのでわかりにくいですが、基本的な考え方はこのように紹介されていました。

既存の減損テストの手続きで使う数値から算出できるので、追加負担は少ないとする意見もある一方で、IASBが問題を把握しきれていない可能性を指摘する声もありました。

このプロジェクトでは次に公開草案とディスカッション・ペーパーのどちらを作成すべきか決定されていませんが、ディスカッション・ペーパーを公表して意見収集すべきと、議長も強く意見を述べていた場面もありました。ディスカッション・ペーパーにてこのアプローチを紹介することになるのではないかと思います。

ヘッドルーム・アプローチが紹介された当初は、関心は集まっていたものの、あまり積極的に支持されていない印象でしたが、ここにきて一気に導入の可能性が高まってきたように感じます。今後このアプローチがどのように具体化されていくのか、注目していきたいと思います。

(本文中の例は、IASB Staff Paper, Goodwill and Impairment research project “improving effectiveness of the Impairment testing model in IAS 36 Impairment of Assets”から引用 日本語訳は筆者による)


イージフ 野口

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