2017年9月4日月曜日

IFRS9号、適用時期直前になぜ改訂か(負の補償を伴う期限前償還要素)

こんにちは。イージフの野口です。最近のIASBでは基準書の大きな改訂は予定されておらず、これまで完了した長期プロジェクトの成果である新基準の適用時期が迫ってきています。 

主な長期プロジェクトによる新基準適用時期は以下のようになっています。

2018年 IFRS9号「金融商品」、IFRS15号「顧客との契約から生じる収益」
2019年 IFRS16号「リース」
2021年 IFRS17号「保険契約」

IASBでは一度最終的な公表を行った基準書を早い段階で改訂することはできるだけ避け、安定的な運用を目指していますが、今年になって、異例の対応でIFRS9号の改訂作業が進められています。

負の補償を伴う期限前償還要素というプロジェクトです。これは、企業向けローンや個人向け不動産担保ローン等で広く採用されている契約条項で、借手が、未払いの元本及び利息の金額を上回る、もしくは、下回る可能性がある変動額で期限前償還される契約条件のことです。

契約を終了させる選択をした企業が相手から補償を受け取る可能性がある場合、現在の完成版IFRS9号「金融商品」では、損益を通じて公正価値で測定される金融商品に分類されることになりますが、実態を考慮すると、公正価値で測定するよりも、償却原価により測定し、正味金利マージンといった業績指標に含めることが有用な情報提供になるのではないか、という問題が指摘されていました。

これは、IFRS9号の不備であり、IFRS9号が強制適用となる前に修正すべきということになり、急ピッチで作業が進められていました。

しかし、公開草案の内容については、肝心の適用要件について意見が分かれてしまっていました。結局、意見の分かれる論点がある部分を削除した形で、公開草案を修正し、最終基準とすることになっています。したがって、適用要件は、


  • 期限前償還額がキャッシュ・フロー要件に整合しない事由が、契約を終了することを選択した企業が合理的な追加の補償を受け取る可能性があることのみであること
という1要件のみで償却原価による測定が可能になります。

最終基準書は2017年10月公表の予定、適用時期は2019年1月1日以後に開始する事業年度からと決定されました。当初、IASBでは、すでに公表されている完成版IFRS9号の発効に合わせ、2018年からとすることが望ましいとしていました。しかし、主に規制当局が国内での承認手続きが間に合わなくなる可能性があるため、適用時期を延期することが求められ、発効時期を遅らせ、早期適用を認める形になりました。

今回の改訂では、移行に関する開示も規定されていますが、これらの規定はすでに完成版IFRS9号の適用済みの企業を前提としています。完成版IFRS9号の適用と同時に移行する企業はIFRS7号が規定する情報開示を行うことが必要となります。完成版IFRS9号と今回の修正IFRS9号の適用時期によって、留意すべき移行時の開示規定がそれぞれ異なるので注意が必要です。これらの関係を図表にしてみました。ポイントは、2018年に完成版IFRS9号と今回の修正を適用することが一番開示内容が軽減されることです。




IFRS9号も適用時期が近づき、対応が大詰めとなっています。適用時期前の改訂は避けると言われていますが、やはり不備があるとできるだけ対応しようとこのような改訂が入ってくることがあります。基準書の適用については直前時期も注意が必要だと思います。


イージフ 野口




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