2016年4月4日月曜日

M&A、のれん減損のタイミングをタイムリーに

こんにちは。イージフの野口です。企業買収、日本でも大型海外案件がここ数年でかなり増えたと思います。2015年の実績によると、日本企業による海外の企業の買収金額は、11兆円を超えたそうです。日本企業が海外企業に買われるというパターンも目立つようになりました。シャープの買収などは記憶に新しいと思います。

これだけ大型M&Aが新聞やテレビでも報道されるようになると、普段会計にあまり関わりのない方からも「のれんの減損って何?」というような質問を受けることも多くなりました。

のれんというのは会計上、企業の公正価値と買収価格の差であり、企業が持っている資産(有形のものも無形のものもあります)よりも高い価格で企業を買うということはそこには、資産としては認識できないけれど、高いお金を払ってでも手に入れたい「何か」があると考えられます。「超過収益力」という言い方をしますが、例えば他の企業が同じ資産を保有していても同じようには収益を上げられないわけで、そのような企業の力を「のれん」と表現します。

そののれんは企業を公正価値より高い金額で買った場合は、資産として計上されることになりますが、現行のIFRSでは、のれんはそのまま据え置かれることになります。これはのれんが時間が経過しても価値を失わないと考えているからです。

しかし、この考え方には異論があります。時間の経過とともに、実はのれんの価値は下がっているのではないか。2月のIASB会議でこんな発言がありました。
「マンチェスターユナイテッドを買った時のれんの償却期間はどう考えればいいのだろう?」
この例では、マンチェスターユナイテッドの人気が今後なくなっていくことは考えられないだろう、だからのれんの償却期間を考えるなんて無理だ、という意見が続いていました。

しかし、そういうファンや顧客からの特別な支持から生じる収益力も何らかの形で損なわれることがあります。最近のニュースでは楽天が2015年に海外事業におけるのれんの減損損失を計上し、売上高が過去最高だったにも関わらず、減益に転じました。減損対象となった企業は電子書籍のコボなどでした。楽天はIFRSを適用していますので、IFRSの減損の手続きに従って、減損損失を計上することになったと思いますが、現在のIASB会議ではこの減損損失を計上するタイミングが遅すぎるのではないか、ということが大きな問題になっています。

楽天の例でいうと、コボは買収当初の想定よりも収益性が低かったため、減損損失を計上しました。しかし、企業側から見れば、現状でも、安定した収益を上げていて価値は減っていない、と主張することもできます。客観的な基準に基づいて、適切なタイミングで減損を計上するということは難しいのです。

現在のIASBの議論でも、タイムリーに減損を認識することが難しいというところで、その解決策を模索している状態のようです。そもそも減損を適時に認識することは実務上不可能ではないか、という懸念から、のれんの償却を行う会計処理も再浮上しています。IASB会議では、のれんを償却しないで、減損の手続きを適用する、償却する、という方法が検討されています。幅広く、検討したいというのが今のスタンスのようです。

さらに、今後はFASBと合同で審議を行い、米国基準と同じ改訂内容を目指します。今の議論がどのように動いていくが注目したいところです。


イージフ 野口

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