2012年10月10日水曜日

IFRSの収益認識: 損失覚悟の売上はどう扱うか

今回もまた引き続き、収益認識を取り上げたいと思います。

今回は、損失が出てしまうことがわかっている上であえて取引をする場合の取扱いについて、という少し個別的なトピックを紹介します。特別なトピックではありますが、IFRSの考え方がよく表れている論点だと思います。


意図的に損失を出すような取引というのは現実には意外と多いものです。取引実績を作り、将来の取引で利益を得ることを期待して、企業はこのような取引をすることがあります。

このような取引についてIFRSの収益認識では、どのように考えているのでしょうか。現行のIFRSでは、引当金として扱います。引当金の計上要件を満たす場合、損失部分が引当金として負債計上されることになります。引当金の要件は以下のとおりです。



1. 過去の事象の結果として現在の債務を有していること
2. 該当債務を決済するために、経済的便益をもつ資源の流出が必要となる可能性が高いこと
3. その金額について信頼できる見積りができること



収益認識の公開草案では、取引によって生じる損失は負債として認識することになります。引当金として扱いません。従来の引当金と違うのは、引当金では契約単位で損失が発生するか否かを確認することになるのに対して、公開草案では履行義務単位で確認することが要求されていました。



通常企業は、契約単位で取引の損益を管理しているでしょうし、履行義務単位での損失の把握は非常に難しいものです。公開草案に対して、多くの反対が寄せられたためにこの点については変更されることになり、もともとの引当金と同じように契約単位で判断することになりました。また、損失が出るような不利な契約であるかの判定は契約当初において行われ、それ以降も不利な変化が生じた場合も再度検討することが必要となります。不利な契約であるかどうかの判断には、履行義務を充足するために直接関連する費用の期待値の現在価値が取引価格を上回っているかを見ることになります。



履行義務に直接関連する費用とは
直接労務費
直接材料費
契約または契約活動に直接関連する費用の配分額
契約において顧客に明示的に賦課できるその他の費用
契約を締結したことによって発生するその他の費用
契約を解除した場合に支払うであろう金額(解除することをコミットしており、かつ、解除することの契約上の権利を有している場合)が含まれます。



契約を解除した場合に発生する違約金等はここでの判断で考慮する必要があります。これは当初の公開草案にはなかったものです。しかし、契約の解除を実際にする場合は、また別の処理を行なうことになります。解除で発生した追加的な損失は基本的に引当金として認識します。



不利な契約の扱いについては、変更がいくつかありましたが、大枠としては引当金としていた従来の考え方にむしろ近くなっています。日本では、このような損失は引当金として処理してきた企業が多いですが、損失の判定に期待値や現在価値で考えるという方法はあまり一般的ではなかったと思います。このようなIFRS特有の考え方には注意が必要です。

イージフ
野口由美子



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