2012年6月12日火曜日

IFRS 9 金融商品の減損を判断する3つのバケット

イージフの野口です。
IFRSを巡る情勢をお伝えしてきましたが、今回はIFRSの改訂動向を取り上げたいと思います。

現在、IASBではさまざまな基準についてプロジェクトが動いています。その中でも、問題が多く、審議が長引いている金融商品の減損について最近の議論と改訂の方向性を解説します(金融商品については減損以外に改訂予定のトピックがあります。それらも重要な改訂事項ですので、また後日取り上げたいと思います)。

金融商品については、主に以下の問題点があり、ずっと改訂作業が続いています。
・基準書(主にIAS39号)が複雑すぎる
・米国基準とのコンバージェンスの達成できていない
・世界経済の状況(リーマンショックやギリシャの国債問題など)に対応した適切な基準になっていない

特に最後に挙げた世界経済については悪い材料が多いこともあって、EU各国とIASBとの間で意見の一致が難しいところがあります。たとえば、EU各国(主に銀行ということになるでしょう)は、今問題になっているギリシャ国債がIFRSの改訂によって評価が変わり、大きなインパクトを受ける可能性があります。銀行にしてみれば、できるだけ損失が軽減されることを望むわけですが、IASBとしては損失を軽減するために基準を作るわけにはいきません。しかし、EU各国の意見を全く無視してしまえば、基準書を公表しても各国で承認されないかもしれません。

このように利害の衝突が多く、改訂が遅れていますが、現在改訂の方向性は定まりつつあり、今年の後半に公開草案が公表される予定です。

そもそも現行のIFRSにある金融商品の減損の規定は何が問題だったのかというと、
減損を一定のトリガー(引き金)となる現象があった時に減損を計上することになっていたというところだと思います。

トリガーとなる現象が減損の要件となっていましたが、要件には曖昧な部分があり、減損の計上タイミングがあやふやになり、結果減損の計上が遅くなってしまっていたのではないか。また、トリガーがなければ、減損しないというのでは金融商品の公正価値を表せないのではないか。現象があった時に一気に減損が発生することが適切なのか。このような問題意識がありました。

そこで、トリガーとなる現象を要件として減損を計上する考え方を変更し、将来キャッシュ・フローの割引現在価値を金融商品の期末の評価額とする方法が提案されました。これまでの減損は割引計算の中に入り込む形になります。言葉で言うことは簡単ですが、実際にこのような将来にわたるキャッシュ・フロー計算をするのは非常に難しいことです。

そこで、新たな提案として、3つのバケット(カテゴリー)に金融商品を分類する方法が新たに提案されました。これは、金融商品の価値の低下の流れに沿って、回収可能性の危険の度合いに応じた減損を計上しようという意図です。

基本的な考え方は、以下のようになります。まず、金融商品は最初にバケット1に分類されます。バケット1は特に問題のない健全な金融商品です。このバケットでは1年後(もしくは2年後)までに発生する損失の期待値を見積り、減損を計算します。金融商品の信用状態が悪化して、全額回収ができない事態が合理的に起こり得る場合、バケット2や3に移っていくことになります。バケット2はポートフォリオ、グループ単位で損失額を計算し、バケット3では個別に計算を行います。計算の単位が違いますが、減損の計算は、同じです。これらのバケットに分類された金融商品は、将来の期待損失を早い段階で計上することになります。

現在のところ、以上のような大枠の考え方が示されていますが、この分類の方法や減損の計算方法についてはさらに詳細な検討がなされることになっています。

日本基準と現在の提案内容を比べてみると、損失計上する金額が期待値であることが大きな特徴だと思います。また、バケットを3つに分類するという考え方は現在の日本基準より簡素なものだと思います。今後の審議の動向によりますが、バケット1から他のバケットに移る要件が厳しいものであると、現行の日本基準よりも早く損失を計上しなければならなくなると思います。バケットを移行する要件がどのように定められるかというところは特に注目すべきです。

イージフ
野口由美子



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