2011年12月5日月曜日

FRSと業績管理

イージフの野口です。
IFRSは日本では連結財務諸表のみに適用されることが予定されています。したがって、個別財務諸表では日本基準となります。
個別と連結で会計基準が違う状況でどのように業績管理を行なっていくか。IFRS適用にあたっては避けられない問題になります。

外部報告としては連結の数値が重要視されるのですから、外部報告と業績管理をリンクさせていくにはIFRSベースでの業績管理を行なっていく必要があります。外部に公表される財務数値と違うものを業績管理に使っていると、社内の管理資料をもとにプラスになる意思決定を行なっても、IFRSベースになるとマイナスの影響をもたらすという結果になるかもしれません。しかし、その一方で、IFRSでは公正価値による測定を重視するために、市場の動向による利益変動が非常に大きく、また、従来の日本基準での利益概念と異なる考え方をとっているため、業績管理には向いていないのではないか、と考えられる場合もあります。

基本的に業績管理に使われる管理会計は各社によって、さまざまな方法があるため、一概にIFRSではこうすべき、という方法があるわけではありません。IFRSのもとでどうするのがよいのか、各社が答えを見つけることになります。

海外ではどうなのか。ICAEWの調査(EU implementation of IFRS and the Fair Value Directive)EUでは、IFRS適用後にIFRSベースで業績管理を行なうようになった企業が69%に及んだと報告されています。しかし、そのように業績管理を変更した企業のうち、IFRSベースでの内部の業績管理は有効か、という質問に対しては48%が有効であるとしているものの、一方で31%が有効でないと答えています。IFRSが社内の管理にそもそも適していないのか、まだ管理手法が確立されていないのか、いろいろな意見が想定されますが、IFRSのもとでの業績管理は先行している海外企業でも試行錯誤しているのではないかと思います。

しかし、IFRSを適用する企業のメリットは、グループ全体の業績管理がより高度化できるところにあると思います。一般的に適用のメリットとしては、海外での資金調達が容易になることや、比較可能性の向上なども挙げられますが、本来、一番のメリットは業績管理にあるのではないでしょうか。

IFRS適用にはコストがかかり、そのコストに見合ったものを社内に残そうとするのであれば、やはり業績管理の高度化を目指すしかないと思います。先ほど紹介したICAEWの調査というのは2007年に公表されたもので少し古いのですが、より最近では、EUの企業でも、2005年の強制適用には間に合わなかったものの、IFRSベースでの業績管理の高度化や業務の効率化を目指して、グループ全体での業務改革を進めているという話を聞きます。具体的には、大幅なシステムの刷新等によりグループでIFRSベースの業績管理を行なうというものです。このような業績管理の高度化を達成した企業においては、IFRS適用のメリットを実感しやすいのですが、逆に単なる制度対応で終わった企業では、特にメリットを感じることができないのではないかと思います。

IFRSの理念としては、財務諸表は投資家に必要な情報を提供するためにあり、そこで報告される数値というものは、企業が投資家の利益になるように行動するため企業内部でも利用されるものであるはずです。現在の実務ではまだその方法は確立されているものではないのですが、すべての上場企業が取り組まなくてはならない課題だと思います。


 


野口由美子



0 件のコメント:

コメントを投稿