2011年9月13日火曜日

業種別IFRSの解説-ソフトウェア業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、IFRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回はソフトウェア業を取り上げます。

収益認識
ソフトウェア業においても大きな検討課題となるのが、収益認識です。ソフトウェアの取引はさまざまな形態があり、取引形態ごとに慎重な検討が必要となります。

IFRSでは、収益認識について履行義務アプローチという考え方を新たに採用しています。企業が顧客に対して義務を履行した時点に収益認識を行なうという考え方です。そこで、契約としては1つの取引であっても、複数の履行義務が識別された場合、その履行義務が果たされた時点でそれぞれの義務に見合った収益を認識することになります。

たとえば、ハードウェアの販売取引で一定期間の保守サービスが含まれている場合、ハードの引渡しとその後の保守は別々の履行義務と捉えられます。ハードの販売は基本的に顧客に引き渡した時点での収益認識となる場合が多いと考えら得ますが、保守の部分については、その期間に応じて時間基準で収益認識を行なうことになります。

また、受託開発の取引においては、単一のプロジェクトの契約形態が複数のフェーズ等にわかれている場合があります。このような場合は、契約単位で検討するのでは不十分です。契約が別であっても、価格の決定が相互依存している関係であれば(事実上、プロジェクト全体の価格が決まっていたり、利益管理がプロジェクト全体を1つの単位として行なっていたりする場合など)、1つの契約とみなされることになります。

無形資産(開発費)
受託開発のソフトウェアについては先に触れましたが、市場販売目的のソフトウェアの開発費については、IFRSでは一部を資産として計上する必要があります。

日本基準では自社開発の市場販売目的のソフトウェアは、最初に製品化された製品マスターの完成時点までに発生した制作費は研究開発費として費用処理され、その後に発生する政策費用は無形資産として計上されます。

一方、IFRSにおいて計上が必要となる無形資産は、一定の要件を満たす開発費になるわけですが、中でも、技術的に無形資産を完成させることのできる可能性という要件が重要なポイントとなります。技術的に完成できるということが判明するタイミングは、現在の日本基準と同じ製品マスターの完成時点と捉える場合も多いと考えられます。

リース
最近注目されるようになったクラウドに関する取引が、IFRSのリースの考え方に照らしてどのように解釈すべきか問題になることがよくあります。ソフトウェア業においては、クラウドでは顧客のバランスシートにオンバランスになるのか、というところに注目している場合も多いようで、その点について説明します。

IFRSが新しく採用するリースの考え方では、リースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースという分類は行ないません。使用権を資産計上するという考え方をとるため、基本的に従来オペレーティング・リースに分類されていたオフバランスの取引も資産計上する場合がほとんどとなります。

クラウドを活用する場合、ハードウェアやソフトウェアを自ら保有することなく利用することができるため、従来のリースの考え方に従えば、そのサービスを利用する企業側ではオフバランスとなる場合が多いと考えられます。

しかし、新しいリースの考え方によると、オフバランスできる場合は限的的ではないかと考えられます。一言でクラウドと言っても、さまざまな形態があるので、一概に結論付けることはできないのですが、例えば、特定の企業向けに設置されているサーバーやカスタマイズされているソフトウェアを利用するような契約については、資産計上が必要となる可能性が高いと考えられます。逆に、特定の顧客の利用を想定しない一般向けサービスであれば、オフバランスになると考えられます。ちなみに、リースの会計処理は貸し手と借り手が対称となる処理がなされることが基本と考えられていますので、借り手である顧客側で、資産計上される場合は、貸し手側では資産として計上されません。

このように、ソフトウェア業の行なう取引はさまざまな形態のものがあり、また複雑なものも多いため、慎重な検討が必要となる場合が多くなります。契約内容を確認することも重要なのですが、本当に重要なのは形式面ではなく実態面になりますので、営業部門など実際に取引を行なっている部署の関与が不可欠です。


 


野口由美子



2 件のコメント:

  1. 保守の収益認識基準は、現行では「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取り扱い」により、提供期間にわたる契約の履行に応じて収益認識を行う、となっていますがIFRSではその期間に応じて時間基準で収益認識を行なうということで期間按分しなければいけないということでしょうか。具体的にいえば3年保守契約を2月に結び保守契約は4月から3年間とします。実際の点検作業が毎6月に実施された場合、毎6月に収益費用を計上するのではなく、4月から按分して収益費用を計上しなければならないということでしょうか。宜しくお願いいたします。

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  2. 野口由美子2012年11月27日 0:56

    伊藤様、コメントありがとうございます。野口です。
    ご質問について、収益費用の計上のタイミングはその保守契約の内容によって異なる、ということになりますが、少し補足します。
    保守契約では、定期的な点検だけでなく、契約期間中の故障等にも対応することが含まれている場合も多いと思います。その場合は、定期点検と故障等への対応とそれぞれ別々に収益費用を計上するというのが基本的な考え方です(今度改訂される新しい基準書では履行義務アプローチといいます)。1つの保守契約ですが、修理と点検と別々の義務として捉え、それぞれ別々に収益計上がなされます。
    ただし、そのような契約であってもほとんど点検がメインで、故障への対応等があまりなければ点検の時にほとんどの収益が計上されることになりますし、逆に点検自体にはほとんどコストがかからず、3年間の保証がメインであれば時間基準で収益を計上することになると考えられます。
    契約がどのような内容であるのか、というのが判断の出発点であることは伊藤様のお考えのとおりで、さらにどのような義務を負っているか(何にコスト負担がかかるか)という観点で判断することになります。
    参考になりましたでしょうか。ご質問などありましたら、またコメントお願いいたします。

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