2011年5月16日月曜日

業種別IFRSの解説-小売業-

イージフの野口です。


IFRS導入の影響は企業によってさまざまなので、その対応方法は一様でないところが難しいところです。そこで、FRS適用上大きな問題となるポイントを業種別に解説します。
今回は小売業を取り上げます。

小売業では収益認識が大きな問題になることが多いです。小売業と一口に言っても業態によってさまざまな取引慣行があります。日本基準においては、売上の計上について特に会計基準がなかったこともあり、それまでの慣行で処理されている場合が非常に多いです。しかし、IFRSでは収益認識について基準が定められていますので、これまでの慣行がIFRSに照らして適切か、検討する必要があります。検討のポイントを紹介します。

収益
履行義務アプローチに基づく取引内容の確認
従来のIFRSで、リスクと経済的便益の移転を収益認識のタイミングとする考え方でしたが、2011年公表予定の新しい基準書では履行義務アプローチという新しい考え方が適用されることにになります。この考え方では、企業が顧客に対して代金を受領するために行なうことを履行義務として識別し、履行義務を果たしたタイミングで収益を認識することになります。
例えば、顧客への物の引渡しと、代金の受領が同時に行なわれるような単純な取引については特に問題がありません。従来と同じように、代金を受領した時点で売上となります。しかし、顧客が購入した商品を、指定された日に配送して届ける場合は、商品を配送する義務、顧客に物を引き渡す義務が発生し、それぞれの義務が履行した時点で収益を認識します。つまり、顧客が物を購入した時に代金を受領していたとしても、物の引渡しが完了していなければ、売上とはできないことになります。
総額表示と純額表示
その他にも、百貨店などで行なわれている消化仕入(顧客に販売された時に仕入先からの仕入も同時に行なわれるという商慣行)については、 百貨店では商品の販売を代行しているものと考えられ、販売代金と仕入代金の純額が売上金額となります。販売代金の総額ではなくなるわけです。
ポイントサービス
さまざまな小売業で顧客の囲い込みのためにポイントサービスが行なわれています。日本の会計基準では特に規定はないのですが、現状では多くの企業でポイント引当金として処理されています。IFRSではポイントサービスは、カスタマー・ロイヤルティ・プログラムと呼んで、処理を定めています。ポイントは当初の販売取引とは別個のものと考え、引当金処理ではなく、ポイントに見合う金額を売上から控除します。その金額はポイントが使用されるまで負債として計上されます。
リベート
リベートなどについての扱いも重要です。リベートなどは実質的な値引きなのですが、長年の取引慣行に依存する部分も多く、その会計処理についてはばらつきがあります。しかし、IFRSでは、実際に受領する金額が収益の額とされることになるので、リベートなどは控除しなければなりません。リベートによっては、販売後になって金額が確定する場合もありますが、そのような場合は見積りが必要です。合理的な見積もりができないと、そもそも収益を認識すべきではないということになってしまいます。

固定資産
減価償却
減価償却方法、耐用年数は日本基準のもとでは税法の規定を採用している場合が多いのですが、IFRSでは実態に即した方法、耐用年数を適用しなければなりません。定期的な店舗のリニューアルが行なわれる場合は、そのことを織り込まなければなりませんし、資産の利用に関わる計画が変われば随時反映しなければならず、毎期見直しが必要とされています。
減損
減損について、日本基準では2期連続の営業赤字といった指標で減損の兆候を把握している場合が多いと思います。しかし、IFRSでは減損の兆候を幅広く考えており、2期連続の営業赤字といった具体的な指標はありません。どういった状況を兆候とするのかは、業態や企業の考え方によって変わってくることとなるので、対応が難しいところです。
また、一度認識された減損は、減損しているという事実がなくなれば、戻入されることになります。その判定や、処理は日本基準にはないもので、管理負担も増えると考えられます。
その他
その他にも、借入費用は大規模なショッピングセンターなどで問題になる場合があります。固定資産の取得をその取得に紐付いている借入金によってまかなっている場合、利息などの借入費用は固定資産の取得原価に含める必要があります。この規定は日本基準にないものです。
また資産除去債務に関しては、日本基準にも導入されましたが、完全に日本基準と同一ではありません。資産除去債務についても慎重な検討が必要だと考えられます。

収益と固定資産を取り上げましたが、小売業ではこの2つの項目が非常に重要で影響が大きいと思います。特に収益認識については、処理を大きく変える場合が多いので、契約形態や取引慣行を慎重に検討することが必要です。


 


野口由美子



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