2011年4月4日月曜日

今立ち返るべきIFRSの基本

イージフの野口です。今回はIFRSの総論的なトピック、IFRSの基本について解説していきます。IFRSについて書籍や雑誌、セミナー等いろいろな機会を利用して勉強されている方にとって、今さらIFRSの基本、といっても知っているようなことばかりだと思います。しかし、最近特にこのような基本について誤解があると感じることが多いので、あえて取り上げてみます。

原則主義
IFRSは原則主義の基準です。日本やアメリカの会計基準等は細則主義という立場を取っているのと対照的です。原則主義の基準ということは、あくまでも基準で示しているのは原理原則だけであり、その個別的な適用や具体的な方法については企業がそれぞれ判断することになります。

ということを多くの方がご存知なのですが、その一方で、日本でのIFRS適用にして指針のようなものが公表されるのではないか、同業他社と足並みを揃えた形で適用したい、という声もよく聞きます。IFRSを初めて適用する企業の本音だろう、と気持ちは分かりますが、このようなことを求めること自体が、細則主義によるものではないでしょうか。

日本が独自にIFRSの日本での適用指針を作ったら、そのことはIFRSの原則主義に反することになり、日本版IFRSができてしまいます。現在の日本の立場は、IFRSそのものを適用することなので、このようなことはできないのです。


また、同業他社のやり方も気になるところだと思いますが、他社のやり方というのはあくまでも参考で、自社の適用は独自に決めなくてはなりません。これまでの日本基準の適用においては、同業の企業は足並みを揃えて会計基準の適用ができていましたが、 そのような状況は多少変わってくる場合もあると思います。このような統一感はやはり細則主義だからこそできるものです。原則主義の基準では、企業がどう判断するのか、ということが重要なのであって、他社と同じであるかということは、それほど重視されるものではないと思います。

比較可能性
IFRSを適用すると比較可能性が高まる、と説明されますが、日本の方にとっては日本基準の方が比較可能性が確保されているのではないか、と疑問に思われることがあるようです。

その疑問はもっともだと思います。日本基準であれば、細かいルールがあるのでより統一的に会計処理が規定され、IFRSによって各自の判断が行なわれるようになれば会計処理にばらつきが出てくることが考えられます。

IFRSの言っている比較可能性とはレベルが違います。どの国もIFRSを適用すればどこで作成された財務諸表も、各国がそれぞれ独自の会計基準を適用している状態に比べれば、比較しやすくなります。たとえば、日本基準の財務諸表と米国基準の財務諸表を比べるには、いろいろな調整を行なわなくてはなりません。同じIFRSを適用すればそれは不要になるだろう、ということなのです。


日本基準のような細則主義の基準は日本独自の商慣行や制度に配慮してできているため、国際的に適用できるかというと、無理があります。そういう意味での比較可能性なのです。日本国内での比較を考えると、これまでより会計処理の統一感はなくなるはずなので、比較可能性が損なわれる可能性は現実にあると思います。

公正価値重視
IFRSでは、B/Sに計上した資産、負債を公正価値で評価することが重視されます。イメージとして企業買収の時等に行なうデューデリジェンスの企業評価や企業の清算価値の算定を思う方も多いかもしれません。確かにそのように考えると分かりやすく思える点はあるのですが、実際には、IFRSが企業の清算価値、期末に企業を精算した場合の価値を求めようとしているわけではありません。

ファイナンス理論の考え方で、公正価値というのは、端的に言って時価ということですが、将来生み出すキャッシュ・フローを現在の価値に置き換えたものとされています。公正価値による評価を広く採用することで企業の将来キャッシュ・フローをB/S上に表現しようとしているわけです。この将来キャッシュ・フローこそが、投資家の経済的意思決定のために必要な情報なのです。IFRSでは、過去や現在というより、将来どうなるのか、ということを判断するために、必要な情報を提供することを求めているわけです。

IFRSの基本をここで改めて考え直してみると、意外と見落とされている重要なポイントが隠されています。時には基本に立ち返ることも重要ではないでしょうか。


 


野口由美子



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