2011年4月11日月曜日

デュー・プロセスについて

イージフの松岡です。


2011年は、SECが米国企業へのIFRS導入の判断をすることから、米国会計基準とIFRSのコンバージェンスが急ピッチで進められており、IFRSから公開草案等の公表が相次いでいます。ここで、IFRSはどのような手続きを経て作成されるのでしょうか。IFRSを作成し公表する手続きをデュー・プロセス(due process)といいます。所定の手続きを経て基準が開発されることは、IFRSの透明性を確保するために重要であり、世界各国でIFRSが信用され導入されるためにも必須の要件になります。


今回は、このデュー・プロセスについて解説します。


 

デュー・プロセスの過程と公表される資料


デュー・プロセスは、大きく以下のような手続きから構成されます。


1.論点の識別・協議と審議事項の決定


IASBに寄せられた意見や助言を考慮してIASBスタッフは、ある議題に関する論点を収集します。その中で、どの議題を優先するのかIFRS財団評議員会や各国の会計基準設定主体等、利害関係者と意見交換を行い、審議事項を決定します。




2.コメント募集のための討議資料(Discussion Paper:DP)の作成・公表


審議事項に関して論点の包括的な概要、論点に対するアプローチ、IASBの予備的見解をまとめたDPを公表し、広く利害関係者からコメントを募集します。受領したコメントはIASBのサイトで公開されます。コメント募集期間は4~6ヶ月程度です。




3.コメント募集のための公開草案(Exposure Draft:ED)の作成・公表


DPに対して寄せられたコメントを踏まえて、IASBで論点を審議し解決した後、EDを作成、公表しコメントを募集します。コメント募集期間は2~4ヶ月程度です。




4.基準書および結論の背景の公表


EDから派生した論点についてIASBで審議し、基準書を作成します。IASBで可決後に基準書が公表されます。基準の開発にあたっての審議の過程や、重要な論点についての決定の根拠について結論の背景が基準書とともに公表されます。基準書の公表後、適用されるまでには通常1~2年の期間が設けられます。




5.適用後レビュー


IASBは、新たな基準書が適用されてから2年後に、適用後レビューを実施します。これは、その基準が当初の意図通りに機能しているかを検証するために行われます。


 

デュー・プロセスを省略した事例


このようにIASBは、デュー・プロセスを厳格に定めていますが、そこには過去の苦い教訓があります。それは、2008年の金融危機下に、デュー・プロセスを省略して金融商品に係る基準の改訂を行ったことです。


この時IASBは、市場の状況からこの問題を緊急に対応すべきとのEUからの要請を受けて、IASC財団(現:IFRS財団)の支持を得て公開草案を発行せずに、改訂基準を発行しました。新基準の発行はEUからの要請があってからわずか1週間ほどでなされました。


 

100年に一度の危機における動揺から引き起こされた事象ですが、IFRSが信頼され世界各国で受け入れられるためには、その基準の作成・公表過程が公明正大に行われなければなりません。


   

松岡 佑三



0 件のコメント:

コメントを投稿