2011年3月7日月曜日

過年度遡及修正についての日本基準とIFRSの違い

イージフの野口です。
日本基準のコンバージェンスはIFRSとの差異を解消するために進められています。いろいろな基準が次から次へと公表されていますが、最近の会計基準は財務諸表の表示に関連したものが多くなっています。「包括利益の表示に関する会計基準」や「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」がそれに該当します。

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」については、過年度遡及修正が導入されるところが非常に影響が大きいところだと思います。この会計基準により、会計方針の変更と表示方法の変更については遡及修正が必要になります。会計上の見積りの変更については、遡及修正が不要です。

そこで、何が会計方針の変更で何が会計上の見積りの変更であるかは、実務上非常に重要な問題になってきますが(表示方法の変更については分類が難しいことはないと思います)、この分類は意外と明確に判断できるものではなく、難しいのです。

実は、IFRSともこの考え方には違いがあります。コンバージェンスの目的で作られた会計基準といっても、日本基準はこれまでの日本での考え方を踏襲しているため、このような差異が残っています。会計基準の中で紹介されていますが、減価償却方法がこの違いを端的に表しています。

減価償却方法の変更は、IFRSでは会計上の見積りの変更としていますが、日本基準ではこれまでの日本基準の考え方を踏襲し、会計方針の変更に分類されます。ということは、日本基準では減価償却方法の変更を行った場合、会計方針の変更となるので遡及修正が必要となると考えられますが、会計基準では、会計方針の変更と会計上の見積りの変更の区別が困難な場合として、遡及修正を求めない、という説明をしています。従来の考え方を変えないが、取り扱いはIFRSとの整合を優先するということになります。いいところ取りをしているような格好になっているのですが、非常に難しい話です。実際これまでの実務でも、何を会計方針として、何を見積りとするのかは、非常に解釈が難しかったのですが、これまで以上に判断に迷うことになります。

このように日本で進められているコンバージェンスというものは和魂洋才というのか、日本基準独自の考え方を維持しつつ、IFRSと整合した取り扱いになるように規定する、しかも、日本の実務に配慮した指針や具体的基準等も設けるという非常に(ある意味ではよくできている)複雑なものとなっているように思います。

このような複雑になった日本の会計基準に対応し、さらにはIFRSへの適用を見据え準備を進めていくための実務書を紹介します。

武田雄治さんの「包括利益・過年度遡及の決算対応—財務諸表の表示が変わる!」(中央経済社)です。武田さんは開示という観点で決算早期化、IFRSに至るまで、いろいろな問題を論じています。実務では、決算作業が順調に進んでも最後の開示作業でミスが生じて短信や有報で間違えてしまうということがよくあります。理論的な問題をおさえるだけでなく、そのような実務の課題へも配慮されている本だと思います。実務に携わる方には非常に参考になるのではないでしょうか。


野口由美子


 



3 件のコメント:

  1. ASBJ第24号でも「減価償却方法の変更」は「会計方針の変更」ではあるものの、
    その変更は「会計上の見積りの変更」と同様に取り扱う旨が記載されていると思いますが・・・
    ��結論の60~62項に詳しく記載されてると思います)

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  2. すみません!よく読んでみると
    「会計基準では、会計方針の変更と会計上の見積りの変更の区別が困難な場合として、遡及修正を求めない、という説明をしています。従来の考え方を変えないが、取り扱いはIFRSとの整合を優先するということになります。」とも書かれてたのですね・・・
    大変失礼いたしました。。

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  3. taichi様、こめんとありがとうございます。イージフの野口です。
    ご指摘の点、まさに混乱を招くところで分かりにくいところだと思います。よく読んでみて始めて、どういう取り扱いなのか分かる。日本の基準もより複雑なものになってきたと思います。
    今後も何か疑問等ございましたらコメントよろしくお願いいたします。

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