2011年3月14日月曜日

結果だけを知りたい投資家、プロセスを管理する管理会計

イージフの松岡です。


 2月14日のエントリーより、IFRS時代の管理会計の続きです。


 これまでの日本基準では財務会計をそのまま管理会計に用いても大きな問題は生じませんでしたが、IFRS導入後はそうはいきません。以下、IFRSの特徴である資産・負債アプローチと時価主義に焦点を当てて、財務諸表の性質(意味するところ)の変化が管理会計に与える影響を解説します。


 


資産・負債アプローチ


資産・負債アプローチでは、まず資産・負債の定義を明確に定め、その差額として純資産を定義します。そして、純資産の前期からの増加額を利益とします。BSが主でPLが従です。BSで算出される純資産から従属的にPLの利益は算出されます。


株価に関心がある投資家からは、財務諸表はその会社の株価の参考情報として有用であることを望みます。資産・負債アプローチは、株価の参考情報として最も基本となる純資産を正確に算定することに主眼を置いています。


このアプローチは、管理会計としてはどうでしょうか?管理会計で使われる資料といえば、部門別PLや製品別PLが頭に浮かびます。これらに象徴されるように管理会計では、プロセスであるフロー(利益)に着目しています。ストック(純資産)はフローの結果であって、フローこそが管理の対象であるためです。


 


時価主義


 IFRSでは、広範囲にわたって時価会計を求めています。例えば、固定資産の時価評価も可能であり、ブランド価値を時価評価する考えもあり、金融商品は基本的にすべて時価評価であり、負債についても時価評価対象となっています。これは、先の資産・負債アプローチとも整合する考え方です。その時々の時価(公正価値)を重視して、ある時点の資産・負債を正確に算定することで、ある時点の純資産を正確に算定できるようにしています。


こうして作られる財務諸表は、企業の瞬間的な公正価値を示すものとなります。もし、これを管理会計にも用いたとすると、決算日の純資産が最大化されるように短期的な利益の追求が目標となってしまいます。


日本基準では、時価会計が強制されているのは有価証券くらいであり、固定資産も負債も取得原価で評価されています。結果、毎期の利益が比較的安定し、長期的視点にたった経営が自然と志向されてきました。


 


フロー志向の管理会計はストック志向のIFRSには馴染まない


日本基準は、期間損益計算と取得原価主義をキーワードとしており、各期の予算、損益管理を重視する内部管理目的の管理会計と親和性が高かったといえます。


一方、IFRSは資産・負債アプローチと時価主義をキーワードとしており、投資家の目線から投資価値評価のために純資産が重視されており、利益は純資産の差額として算定されるにすぎず、利益獲得のプロセスが見えづらくなっています。


以上の観点から、資産・負債アプローチと時価主義をとっているIFRSでは、フローを管理する管理会計とは馴染まないということができます。経営者がマネジメントできるのは株主価値という結果に至るプロセスであるところ、IFRSではプロセスとしての収益・費用及び利益情報が見えにくくなっており、必ずしも経営管理に有用な情報とはなっていません。そこで、IFRS時代には各社がそれぞれ自社にあった管理会計をもつ必要があるのです。


松岡 佑三



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