2011年2月14日月曜日

IFRS時代の管理会計

IFRSを一言で表すならば、投資家のための世界共通の財務報告基準です。IFRSの目的は、ルールを統一することによって、グローバルな資本市場において企業間の比較可能性を向上させることにあります。制度はそこに参加する者すべてが、同じルールに従うところに意義があります。上場企業は、株式市場に参加するために好むと好まざるとに関わらず、世界共通ルールのもとで財務諸表を作成し、開示しなければなりません。


上場し続ける限り資本市場が要請する制度会計への対応は必須ですが、それだけで十分でしょうか?財務諸表には、経営者の説明責任を果たす機能だけでなく、経営の羅針盤としての機能もあります。IFRSベースで作成された財務諸表は、そのまま管理会計に使えるのでしょうか? 


 


現行の日本基準では、財務諸表の利用者として、経営者、債権者、税務当局、投資家と様々な利害関係者を想定しています。利害関係者は、異なる情報ニーズを持っています。経営者は、経営管理に役立つ情報を、債権者は、企業の債務弁済能力を、税務当局は、企業の租税負担能力を、投資家は、将来の企業価値の予測に役立つ情報を、それぞれ求めています。したがって、日本基準は、多種多様な利害関係者の要請に応え、納得が得られるように基準の設定をしてきました。


このように従来の日本基準では、財務諸表の利用者として経営者も想定されていたがために、制度会計で作成された財務諸表をそのまま管理会計に用いたとしてもそれほど不都合は生じませんでした。


 


一方、IFRSでは、財務諸表の利用者を「第一義的には投資家を対象としている」と明示しています。また、「IFRSの目的は、世界の一体化している資本市場に財務報告に関する共通の言語を提供することであり、それによって取引が世界中のどこで起ころうとも関係なく、最善の方法で処理することが可能になる」とディビット・トゥイーディーIASB議長が述べているように、IFRSが念頭におくのは資本市場の共通言語です。基本的に投資家以外の利害関係者については、考慮しません。


つまり、IFRSは投資家が必要とする情報ニーズを満たすため、外部報告目的に特化したルールといえます。よって、純粋な制度会計の基準であるIFRSをそのまま企業内部の管理会計に用いることには無理が生じ、経営に混乱をきたすでしょう。


 


IFRS時代にあっては投資家のための制度会計と経営者のための管理会計は別物と認識する必要があります。IFRS対応というと、IFRSに準拠した財務諸表を作成する体制を整備すること、と捉えられがちですが、管理会計についての対応も考えておかなければなりません。IFRSを契機に、各企業は自社の実情にあった管理会計の手法を今一度見直すことになるでしょう。


次回は、制度会計がIFRSに変更となることで生じる管理会計上の問題点についてさらに考察していきたいと思います。


松岡 佑三



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