2011年1月24日月曜日

強制適用の方法について

イージフの松岡佑三と申します。今回は松岡のエントリーとなります。


昨年は、2009年6月の金融庁の中間報告を機にはじまった監査法人や情報システムベンダのIFRS熱に疲れが見えてきた年であったと思います。業界を上げてIFRSを盛り上げようとする側へのアンチテーゼとして学者やシンクタンクがIFRSに批判的な見解を述べることが増えました。


IFRSを無批判に受け入れることも、IFRSの本質を理解せずに反対することも、どちらも生産的なことではないので、我が国におけるIFRS導入について賛否様々な意見が交わされることが有益です。今議論すべきは、どう導入するかの方法論ではなくて、IFRSがどういうもので日本はどうあるべきか、ということでしょう。


今回は、その中で強制適用の方法について考えてみたいと思います。


1.一斉適用ではなく段階適用


我が国のIFRS導入に際して全上場企業への一斉適用ではなく、例えば東証1部のみ先行適用し、その他の市場には段階適用していくことは選択肢としてありうるのではないでしょうか。先行適用企業の事例を参考とすることによって、これに続く企業は、対応方法や対応コストについて予測を得ることができ、余裕をもって取り組むことができます。


(1)投資家と企業のニーズ


東証1部の株式売買高に占める外国人比率は53%です(2009年度)。一方、ジャスダックの株式売買高に占める外国人比率は23%です(2009年度)。IFRSの目的は世界共通ルールによる投資家への情報提供であるので、相対的に海外の投資家からの情報ニーズが少ない市場への適用は優先度が下がると考えられます。


また、企業側にとっても国際的な資金調達ニーズがありIFRSを導入するメリットのあるグローバル企業は全上場企業の一部であり、国内で間接金融中心に資金調達を行っている企業にとっては、IFRSを積極的に導入する理由はありません。


(2)日本市場の地盤沈下を防ぐ


最近、MBO等で非上場化する企業が増えています。それらの多くは上場維持コストの上昇を理由に挙げています。中堅・中小の上場企業にとって、IFRS対応は上場維持コストを大幅に上昇させるでしょう。IFRS強制適用を機に上場維持を断念する企業が続出する可能性を否定できません。上場企業数が減少していく日本市場は、投資家にとって魅力が薄いものとなり、見放されてしまう懸念があります。


2.株式公開企業は任意適用


ただ、新興市場は段階適用にするといってもこれから新規上場をする企業にはIFRSの任意適用を認めることが必要でしょう。株式公開時にこそ資金需要は一気に高まるのであり、その時にこそ日本だけでなく世界中からリスクマネーを集めた方が効果的です。


また、株式公開時は日本基準で、数年後にIFRS強制適用ということになれば、両基準の対応コストが発生することになり、株式公開に水を差すことになりかねません。ただでさえ株式公開企業数が低迷している日本市場にとって、これ以上株式公開を抑制する施策を実施すべきではありません。




いずれにせよ、日本にとっては外に向かってグローバル経済での流れに乗り遅れることなく、内に対して日本企業の負担を抑えつつ日本市場の活性化を促すという難しい舵取りが続きます。今年もIFRSに関して、世界及び日本で様々な動きがあると思いますが、表面的な事象に惑わされることなく本質を考えて意見発信をしていきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。


松岡 佑三



0 件のコメント:

コメントを投稿