2010年12月20日月曜日

IFRSヘッジ会計はどう変わったか ①

2010年12月、IASB(国際会計基準審議会)はヘッジ会計についての公開草案を公表しました。

今回はこの公開草案の中でも特に注目すべき点について説明していきたいと思います。

ヘッジ会計はリスクマネジメント活動に即したモデルに集約


今回の公開草案は、金融商品についての基準書であるIAS39号の置き換えのプロジェクトの一環として行なわれています。このプロジェクトの主な目的は、金融商品会計の簡素化であり、今回のヘッジ会計についても、詳細で複雑だった規定を廃止し、より原則主義の基準書に相応しい内容に簡素化が図られています。従来のIFRSで定められていたヘッジ会計は複雑な規定が多いことから、実際の企業のリスクマネジメント活動に即した処理ができないと言われていました。公開草案ではより、実際の企業活動を財務諸表に反映させられることが目的とされています。

公正価値ヘッジはキャッシュ・フロー・ヘッジに近い会計手法に変更


従来のIFRSではヘッジ会計を公正価値ヘッジとキャッシュ・フロー・ヘッジに分類して処理を分けていました。これは日本企業にはない考え方です。

公正価値ヘッジというのは、公正価値の変動リスクを回避するためのヘッジで、基本的に時価ヘッジ処理(ヘッジ対象とヘッジ手段を時価評価し、損益をP/L上に計上する)を行ないます。これに対して、キャッシュ・フロー・ヘッジはキャッシュ・フローの変動リスクを回避するためのヘッジで、繰延ヘッジ処理(ヘッジ手段の時価変動をその他包括利益とし、資本の部に計上する)を行ないます。ちなみに日本基準ではこの繰延ヘッジ処理がヘッジの原則的な処理とされています。

今回の公開草案では、この公正価値ヘッジの処理がなくなり、キャッシュ・フロー・ヘッジに近い処理を行なうことになりました。つまり、ヘッジ対象とヘッジ手段の時価評価による変動はその他包括利益として繰り延べることになります。日本基準の手法に近くなったということになります。

従来のIFRSのヘッジ会計は、企業がヘッジを実際にやっていたとしても適用が難しい場合があり、適用のハードルは高かったと思います。今回の改訂により、ヘッジ会計はより適用しやすくなるのではないでしょうか。次回は実務上の手続に影響を与える改訂内容をご紹介したいと思います。



2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    たびたび参考にさせていただいています。
    公正価値ヘッジ会計の説明についてですが、キャッシュ・フロー・ヘッジに近い処理方法というのは、内容をご承知のうえでの簡略化した表現なのかと思いますが、やや誤解を招く言い方になるかと思います。
    従来のIAS 39では次のような処理となっていました。(ヘッジ手段が損失の場合)
    (1) 損益 / ヘッジ手段
    (2) ヘッジ対象 / 損益
    今回の公開草案では次のようになります。
    ��OCI=その他の包括利益)
    (a) OCI / ヘッジ手段
    (b) 独立の資産・負債科目 / OCI
    ��ヘッジ対象の帳簿価額は調整しない)
    キャッシュ・フロー・ヘッジでは(b)の仕訳がないので、その点が異なることになります。
    日本基準との比較では、公正価値ヘッジに関しては、以前の日本基準で資産・負債として繰り延べていた処理に近くなっており、現在の日本基準の処理(公正価値ヘッジでも上記の(a)だけを行う)とは異なります。

    返信削除
  2. コメントありがとうございます。野口です。
    ご指摘の点はごもっともで、ヘッジ会計をよくご存知の方にとっては、不正確な表現に感じられるかもしれません。
    ただ、このブログでの解説は、できるだけ平易な表現をしようとしています。今回の「キャッシュ・フロー・ヘッジに近い」という言い方は、細かい説明をせずに処理がイメージできるのではないか、と思い使ってみました。IASBからの説明でもこのような表現を使っていたので、よくご存知の方にとっても、何を言っているのか伝わりやすいのではと、誤解を招きにくいと考えていました。
    ご指摘ありがとうございます。正確性を求めるなら、やはり原文をそのまま見ていただくことが一番ということになるでしょうか。

    返信削除