2010年11月1日月曜日

金融負債の評価について新しいIFRSが公表される

2010年10月28日に国際会計基準審議会(IASB)が金融商品会計の基準書(IFRS第9号)に新しい規定を追加しました。金融商品に関する規定は金融危機以後、早急に対応すべき課題として急ピッチで改訂が進められてきましたが、改訂作業は難航しています。今回の新しい規定の公表も非常に難しい問題を抱えていたため、ようやく公表に至った、という印象です。

今回公表された新しい規定では、金融負債(営業債務、借入金、デリバティブなど)についての会計処理が扱われています。

これまでのIFRSでは、通常の金融負債は償却原価で評価し、デリバティブといった特殊なものは時価で評価することになっていました。ちなみに日本基準では通常の金融負債は債務額で評価することになっていますので、実効金利による利息計算が不要となっています。

また、IFRSではこの他に選択規定が認められていて、時価で評価を行なうという公正価値オプションを採用することができます。IFRSでは公正価値(端的に言えば時価)による評価を重視しているので、この公正価値オプションには、できるだけ幅広く公正価値評価を適用しようとする考え方が表れています。

しかし、この公正価値オプションを金融負債に適用すると、非常に変な現象が起きてしまいます。金融負債の時価というのは、債務者の信用リスクが反映されることになります。つまり、金融負債を計上している企業自身の信用リスクが高くなるとそれが、負債の時価にその上昇したリスクが織り込まれ、負債の価値が低くなります。負債が減少すると、その差額は利益として処理されます。

実際に、近年の金融危機ではこの公正価値オプションを選択している金融機関が、自己の信用リスクが高くなったことで多額の利益を計上しました。企業自身の業績悪化で倒産リスクが高くなったことで、利益を計上できる、というのはおかしい話です。非常に問題視されました。

そこで、今回の新規定では金融負債の全般的な評価方法については、これまでの方法を踏襲しつつも、問題となった公正価値オプションの場合のみ、信用リスクの変動によるについては損益としてではなく、その他の包括利益として処理することが定められました。この変更により、信用リスクの増大による利益計上という問題を解決しようとしています。

当初、公開草案ではその他の包括利益による処理を2段階で行なう複雑な方法が提案されていました。一度損益としても計上した上で、その他の包括利益にその額を移すというものです。しかし、財務諸表を必要以上に複雑にするということで強い反対を受けたようです。また、損益として計上したものをその他の包括利益に移すという方法も今までにないやり方であり、そもそも、包括利益とは何なのかきちんと議論されていないでこのような処理を導入することを問題視する声もあったようです。

今回公正価値の問題が1つクリアされましたが、まだ解決されていない問題もありますし、新しい問題が提起されることもあると思います。さまざまな問題にいかに取り組んでいくか、これからもIFRSの動向を追いかけて考えていきたいと思います。



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