2010年1月25日月曜日

国際会計基準の引当金が変わる:IAS37の公開草案

国際会計基準審議会(IASB)は2010年1月にIAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」の改訂を再提案する公開草案を公表しました。



この公開草案では、引当金の測定方法が大幅に変更されることになります。



現行の規定では、引当金は
(1)過去の事象の結果として現在の義務を有していて
(2)義務を履行するための経済的便益のある資源が流出する可能性が高く
(3)金額を信頼性を持って見積可能である
ことが要件になっています。
基準書に明記されていることで、(2)の「可能性が高い」というのは50%を超える可能性を指しています。



現行では発生する可能性が低ければ引当金を認識することはありません。
認識する場合は支払金額の最善の見積りにより測定されることになり、最も可能性の高い金額をもって引当金とする場合が多いと考えられます。
また支払金額自体も直接的な費用のみで検討していると思います。



一方、今回の公開草案では
企業が有する義務の期待現在価値を測定するアプローチが採用されています。
このアプローチでは、企業の義務について予想されるすべての結果を加重平均して測定されます。
可能性が50%以下の場合でも、期待値の加重平均で認識が必要となります。
また、直接的な費用だけでなく、義務の履行に必要な間接的な費用も含まれることになります。
この加重平均した金額から貨幣の時間価値を考慮して割り引きます。



今回の公開草案によると、それだけでなく期待値から実際の支払額が乖離するリスクも見積もらなくてはなりません。
例を見ると、5%など率でこのリスクを見積もることが想定されているようですが、実際には判断が難しいところだと思います。



引当金の計上が必要になる場合というのは、
和解金や違約金など企業にとって債務を負うだけでなく企業イメージの低下など悪影響を及ぼすことが多いので、
現実には計上が遅れがちになるようです。
今回の公開草案では発生可能性がそれほど高くなくても引当金が必要となるので、引当金の計上が早い段階で行なわれます。
実務への影響は大きいのではないでしょうか。



2 件のコメント:

  1. いつも楽しみに拝見しております。
    今回の改訂により、義務の期待現在価値を測定するがアプローチが採用されたとのことですが、
    ��1)過去の事象の結果として現在の義務を有していて
    の部分については、現行の考え方が踏襲され、債務性がある場合にのみ引当金の対象になるという理解であっていますでしょうか?
    これを前提として質問をさせてください。
    IAS11『工事契約』36項及び日本基準の『工事契約に関する会計基準』19項において
    それぞれ、工事契約総原価が総収益を超過する可能性が高い場合には予想される損失は直ちに費用認識する旨の規定があり、日本基準においては工事損失引当金を計上する旨が明記されていますが、IFRSでは損失計上の見合勘定までは明記されておりません。
    債務性がない工事損失引当金はIFRSでは計上が認められないと思いますので、I損失の見合として、仕掛品勘定(未成工事原価)を直接減額するという処理が私見なのですが、野口様はどう思われますか?
    完成基準を適用している場合には、減額対象となりうる勘定が仕掛品勘定(未成工事支出金)ぐらいしかないと考えられますが、進行基準を適用している場合には、仕掛品勘定のほか、売掛金勘定(未成工事収入金)も考えられます。
    どちらの場合であっても処理が変わらないという観点からは仕掛品勘定が損失の見合になると私は考えておりますが、引当計上の可否も含めて野口様のご意見をいただけますでしょうか。
    お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

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  2. コメントありがとうございます。
    まず、引当金の範囲について国際会計基準では債務性があるものが対象となることは
    公開草案も変わりありません。
    よって、工事損失引当金は計上されないと思います。
    そこで、日本基準でいうところの工事損失引当金に該当する損失を認識する場合、
    おっしゃるとおり、
    仕掛品勘定を減額することになるのではないでしょうか。
    費用となる項目を減額しないと
    収益と対応できないと思います。
    工事契約自体も今後の動向が気になるトピックですね。

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