2010年1月18日月曜日

国際会計基準導入のカギは:先行導入国に学ぶ

日本でも国際会計基準が適用される見通しとなり、
各方面で着々と準備が進められています。



企業会計審議会などから国際会計基準の日本語訳が発行されました。
金融庁からは国際会計基準に基づく連結財務諸表の開示例が公表されています。
個々の企業でも国際会計基準自体を知るという段階から
自社の影響を分析するといった検討が始まっています。



こうなってくると、先行して国際会計基準を適用している海外の状況が気になってきます。



2011年に国際会計基準を適用するカナダでは、
すでに本番に向けて日本より先行して準備が進められています。



カナダでもやはり導入にあたっての混乱はあったようで、
ひとつ問題になったのが、ガスなどの料金規制産業に属する企業の会計処理です。
このような企業では原価を料金として回収し、一定の利益を確保した上で
超過した分は還元します。
このような企業活動の会計処理についての基準書がなかったのです。



カナダからの問題提起についてはインドでも同様の問題が指摘され、
またすでに導入されているEUなどでも同じ問題が認識されました。



そこで、国際会計基準審議会(IASB)は新しい基準書を開発することにしました。
カナダからの問題提起が2008年で、
2009年にはプロジェクトが発足し、現在公開草案が公表されています。
2010年の上期には基準書の公表となる予定です。



このように新規の国によって問題点が発見され、
新しい基準書が作成されるということがあるのです。



IASB議長が指摘していますが、
新しく導入した国では必ずといっていいほど
予期できないような思いがけない問題が起きるものです。
それに対してIASBも十分なサポートを行なっていくとのことですが、
問題の発見にはその国での十分な検討が必要になります。



今年は日本でも国際会計基準についての議論が活発になって
国際会計基準の発展に貢献できるような問題提起ができればいいと思います。



重要なのは、早期発見、早期対応、ということではないでしょうか。





4 件のコメント:

  1. いつも楽しみにしております。
    新しく導入した国で予想できない問題が生じるというのは、各国への翻訳上の問題もありそうですね。
    今回はかなり細かい質問で恐縮なのですが、このような翻訳に関連して質問があります。
    工事契約については、IAS11で定められておりますが、中央経済社発行の国際財務報告基準(IFRS)〈2009〉によりますと、この基準の範囲が1項において、『本基準は、施工者の財務諸表における工事契約の会計処理に適用しなければならない』と定められています。
    この1項の和約だけを読むとIAS11は工事の施工者だけが関係あるという理解で終わります。しかし、IFRSの原文で施工者はcontractors とありますので、施工者ではなく契約者とも訳せ、その適用範囲について混乱しております。
    具体的には、IAS11では5項(a)において、『例えば、プロジェクトの管理者及び設計者の役務に関する契約のような、資産の建設工事に直接関連した役務の給付に関する契約』も工事契約に含まれるとあります。
    この(a)における契約では、役務提供者は、施工者(工事の実施者)ではないと思いますが、契約者(5項に定められた役務提供契約の当事者)ではあります。
    したがって、contractorsを施工者ではなく契約者と翻訳しますと、
    工事の設計業務は工事契約に含まれ、IAS11は工事契約の契約者(contractors)に適用されるため、工事の設計者も、IAS11の適用対象になると読めます。
    このような解釈で、私は施工者以外であってもこのような場合にはIAS11の適用範囲に含まれるのではないかという個人的な見解なのですが、野口様ならばどのように考えられますか?
    状況によって違うので、答えを出すというよりも野口様の見解として教えていただければ幸いです。
    ちなみに私は英語の原文をすらすら読めるほどではないので、的外れな質問かもしれませんが、ご容赦ください。

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  2. コメントありがとうございます。野口です。
    基準の翻訳をめぐる問題は日本だけでなく他の国でもあると聞きます。
    確かに言葉の問題は大きく、結局原文を参照するしかないと思います。
    ご指摘の工事契約の訳語については、全く気がついていませんでした。
    確かに混乱します。
    私は特に翻訳の専門家ではありませんし、個人の意見を申し上げることしかできませんが、
    sn様の見解と全く同意見です。
    施工者と訳していますが、実際の適用範囲には施工者以外の設計者なども含まれると考えます。
    理由についても原文がcontractorであり、具体的な内容に明示されているという、やはり同じ意見です。
    訳された方は施工者を広く工事を行う人ととらえ、設計なども含めて考えていたのかもしれません(本来そのような意味はないのでしょうけれど)。
    今回の翻訳作業には私の監査法人時代の上司も担当していたようなので、
    機会があれば実際に翻訳作業にあたった方にこの訳語の意図について聞いてみたいですね。

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  3. ご回答ありがとうございます。
    私もたまたま収益に関する基準書IAS18を読んでいたところ、
    4項の範囲において、プロジェクトの管理者等は、IAS11の工事契約に関する定めに従い扱われるという記載がありまして、IAS11を読んだところ、こちらでは、『施工者に適用』とあったものですから混乱してしまったところが質問の発端です。
    今回、野口様にも同様のご見解を頂いた事により、
    全てを原文にまで遡って考える必要はないものの
    疑問や矛盾点を感じたら、原文にあたってみるという作業は非常に大切だという事を
    改めて認識する事ができました。
    お忙しいところ、ご意見をいただきどうもありがとうございました。

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  4. コメントありがとうございます。
    私が初めて国際会計基準で仕事をした時は日本語訳が自分の手元にはなかったので(発行はされていたのかもしれないのですが)、
    日本語版に慣れておらず、よく分からないこともあります。
    今は日本語版もよく読んで理解を深めていきたいと思います。
    今回のご指摘も非常に興味深く思いました。ありがとうございます。

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