2019年12月4日水曜日

中小企業向けIFRSと在外子会社の問題とは

中小企業向けIFRS(IFRS for SMEs) は、日本企業にとってはあまり馴染みのないものですが、世界的に見るとあまり軽視できない存在になってきているかもしれません。

もともと中小企業向けIFRSは自国の会計基準が未整備であるような新興国向けに開発されてきたもので、先進国ではあまり採用される余地がありませんでした。現在も、先進国においては採用が進んでおらず、中小企業には自国の会計基準を適用するのがふさわしいという考え方が多いと思います(今後もこの考え方はあまり変わらないのではないかと思います)。

それでも世界的に見ると、2016年のIASB公表資料によると84の国や地域で中小企業向けIFRSの適用が強制または容認されています。日本企業自身が中小企業向けIFRSを適用することはあまり考えられませんが、新興国を中心に採用が広がってきているので、海外で活動する日本企業が中小企業向けIFRSに遭遇するケースは増えてくるのではないかと思います。

たとえば、IFRSを適用する親会社自体は先進国にあり、国内子会社は中小企業向けIFRSを適用するケースがなくても、海外の子会社で中小企業向けIFRSが採用されている場合などが考えられます。日本においても、子会社にとっての中小企業向けIFRS適用を目にすることはあるのではないでしょうか。

子会社が中小企業向けIFRSの適用対象となっていても、親会社がIFRSを適用している場合、基本的には会計基準を統一しなければならないので、子会社もIFRSを適用することになります。これまでのIASBの見解によると、IFRSはひとつの会計基準であり、IFRSを適用している会社は中小企業であってもIFRSの規定を適用する以外に余地はない、と考えられていました。

しかし、中小企業の定義を満たすような子会社が親会社の会計方針に合わせてIFRSを適用していたとしても、その子会社単体としてフルIFRSを適用するのは非常に負担が重いものです。中小企業向けIFRSは、基本的に財務諸表の公表義務のない中小企業が適用するために開発された基準で、本来のIFRSより簡素化された内容になっています。特に親会社の連結財務諸表作成には直接必要ないIFRSの開示要求すべてに従う必要はないのではないか、という疑問の声が多く上がっていました。

2019年10月のIASB会議では、中小企業である子会社に対し、開示に関しては中小企業向けIFRSの適用を認める方向で審議が進められました。具体的には、中小企業向けIFRSの修正とはせずに、IFRSを修正することで対処していくことが合意されています。

改訂に関する公表文書のスケジュールはまだ未定ですが、比較的早い段階での改訂が実現するのではないかと思います。


野口由美子


2019年11月5日火曜日

IFRS、資本性金融商品の区分について、改訂の方向性は

資本と負債をどのように分類すべきか、という問題は古くて新しい問題だと思います。現状では、IAS32号にある限定的な内容にとどまっており、抜本的な解決策が模索されてきました。資本の特徴を有する金融商品というプロジェクトとして取り組まれてきましたが、プロジェクトの歴史も長く、過去には2008年にディスカッション・ペーパー(DP)が作成されています。

しかし、このDPについてはあまりにも反対意見が多く、さらに当時は他のプロジェクトを優先しなければならない事情もあったので、審議は一旦中断され、その後再び着手され現在に至っています。再着手後の現在のプロジェクトでは、過去のDPにとらわれない新しい取組みとして検討が進められてきました。

そして、2018年6月に公表されたDP「資本の特徴を有する金融商品」は、資本と負債の分類を包括的に規定する意欲的な内容となっています。

DPでは、資本と負債の区分を明確化するために、次の2つの要件のもとで分類を行う新しいアプローチが提案されました。

  • 清算時以外の特定の時点に経済的資源を移転する、回避不可能な義務(時点の特性)
  • 企業の利用可能な経済的資源に依存しない金額に対する、回避不可能な義務(金額の特性)

これら2つの特性のいずれか、または両方を含む請求権は金融負債、いずれも含まないものは資本性金融商品に分類されることになります。

IASBの見解では、このアプローチによって、従来の資本と負債の分類から大きな変更は生じることはなく、現行の実務に対する影響は大きくならないとされていました。特に、IAS32号の例外規定として認められているプッタブル金融商品および清算時にのみ企業の純資産の比例的な取り分を他の当事者に引き渡す義務を企業に課す金融商品を資本として表示する取扱いについては、例外規定もそのまま維持することとなっています。

2019年6月から9月にかけて、IASB会議ではこのDPに対するフィードバックの内容が報告され、今後のプロジェクトの方針についての審議が行われました。

このDPに対する利害関係者からの意見としては、全体的な考え方については概ね賛成であるものの、現行の実務から大きな変更となる提案については反対意見が多く寄せられました。

DPの分類の2要件についても懸念点が指摘されています。

DPのアプローチによっても、多くの金融商品について資本と負債の分類は変わらないとされていますが、実際には変わってしまう場合もあります。たとえば、償還期限のない優先株式で、配当額が固定、未払時に累積するタイプのもの等は、現行では資本に分類されていますが、新しいアプローチでは負債に分類されることになります。

そのことを問題視する声はIASBが想定している以上に大きく、発行者、投資家双方が分類の変更が市場に混乱を及ぼす懸念を示しています。DPでは財務諸表上の資本の表示などについても、大きな実務の変更を伴うような、思い切った提案をしていましたが、そのような内容についても反対意見が非常に多くなっています。

IASBではこのフィードバックを受けて、実務の大きな変更を伴う改訂は控え、現行のIAS32号がより効果的に適用されることを目指す方針を取ることにしました。大幅な基準の改訂は行わず、IAS32号のいくつかの原則を明確化することによって実務上の問題に対処するものとしています。

IASBでは、DPで提案した抜本的な変更による解決は時期尚早であり、今回の改訂を試金石として、長期的な視点で整備をしていくのが望ましいのではないかという考えに落ち着きました。改訂の範囲は狭められることになりますが、DPの内容をどのように取捨選択していくか、具体的な検討は今後進められることになります。


野口由美子

2019年9月4日水曜日

IASBとFASB、のれんの会計処理について意見交換

IFRSと米国基準は、現在それぞれ別個に改訂されていて、かつてのコンバージェンス・プロジェクトのようにIASBとFASBが共同で基準を設定する活動は行なわれていません。プロジェクトとしての活動はなくなってから、両審議会は年1回ペースで合同会議を開催して、両基準の動向について報告、意見交換を行なっています。

この合同会議の場は、あくまで意見交換の場に過ぎず、何らかの意思決定が行われることはありません。でも、毎年の会議を見ていると、この会議の場で話題になったことが今後の基準設定の場でも大きく取り上げれられる場合が多く、「国際的な会計基準の潮流」の先端を垣間見られると私は思っています。


2019年7月に開催されたIASBとFASBの合同会議のなかでは、のれんの会計処理に関する意見交換がとても興味深いものでした。

企業結合に関する会計処理は、両基準間に一部差異があるものの、概ね統一されています。企業結合は他の分野よりも差異の縮小が意識されてきたと思います。

しかし、今回の意見交換では、両審議会がそれぞれが異なる意図で異なる方向性を目指している印象を受けました。特にのれんの減損テストに対するスタンスには大きな違いが感じられます。

両審議会ともに、のれんの減損テストには問題があるという認識は同じで、コストがかかる割には適切な減損損失が認識されず便益は不十分、と考えています。

IASBでは、当初、減損テストのより効果的な手法の開発を目指しました。減損テストの新しいアプローチの開発を検討しましたが、複雑すぎて現実的な手法に展開できず、さらにはのれんの償却処理の復活案もありましたが、これらは却下されました。減損テストは現行の枠組みを維持する方針です。その代わりに開示の充実を図ることとしています。

開示の充実に関しては、FASBから疑問や質問が多く述べられました。FASBの端的な指摘は、IASBの方向性では

「減損損失を認識するほどではないが、企業結合が想定通りにうまくいっていない」

というメッセージが企業から発せられることになり、それが市場に対して適切なメッセージとなるのか、という疑問と共に、有用な情報を提供するにはより吟味が必要であるのではないかということでした。

FASBからは開示の充実に対して疑問視する声が多い印象ではありましたが、FASBもかなり関心があるように感じられました。

一方FASBでは、のれんの会計処理についてIASBよりも簡素化に重点を置いた検討を進めようとしている報告がされました。実際に、主に非公開企業を対象に、減損テストを2ステップから1ステップの手続に簡素化することや、のれんの償却処理を容認することなど、簡便な処理を認める修正を行っています。

米国内ではそのような簡便処理の適用範囲を公開企業や非営利企業にも広げる要求があり、FASBでは、2フェーズに分けて検討を進めています。第1フェーズでは、公開企業に対しても、減損テストを1ステップの手続で行うことを認める修正を提案し、次の第2フェーズで何を検討すべきか、コメント募集を行っています。FASBは、公開企業に対してものれんの償却を認めるべきかという点も含め、減損テストの手続、開示、無形資産の認識など、のれんの取り扱いについて意見募集しています。

IASBではすでにのれんの償却処理をDPで提案しない決定を行っています。会議の場では、FASBに対して、のれんの償却に対するスタンスを確認する質問が相次いでいました。

FASBでは非公開企業などへの対応を進めるなかで、公開企業でも同様の要求があることが判明し、検討に至ったことが説明されていましたが、のれんの償却がどれだけ支持されているかという点については、米国内でも賛成反対さまざまな意見があり、特に財務諸表利用者からは懸念が多いことにも触れられました。

FASB からは、まだ意見募集の段階であるため、何を審議の対象とするかは未確定であり、寄せられるコメント次第、という話だけでしたが、現段階ではのれんの償却も十分検討の余地を残しているようなニュアンスでした。今後のスケジュールについては説明がありませんでしたが、審議にはそれなりの時間がかかる想定なのではないかと思います。

会議の冒頭で、IASB議長は「IFRSと米国基準の自然な形でのコンバージェンスが達成されることが望ましい」と話していましたが、両者のバランス関係は微妙なところです(あえてそうすることが自分たちの利益になると考えてのことだと思うのですが)。両基準の差異が広がることは多くの人にとって不利益であるのは確かです。今回のような会議の場が今後の基準設定に生かされていってほしいところです。


イージフ 野口



2019年8月2日金曜日

IASB、のれん償却の再導入案は否決。その背景は?

のれんの償却を復活させるべきか。IASB内でもこの1年くらいの間に大きく揺れた話題でしたが、IFRS3号「企業結合」の改訂に関連した今回のプロジェクトでは、

「のれんの償却を再導入しない」

という結論が出されました。

2019年6月のIASB会議にて、ディスカッション・ペーパー(DP)での提案内容の採択が行われ、のれんの償却については、長く白熱した議論が展開されました。

プロジェクトでは、現行の減損テストの枠組みでは減損損失の認識が「少なすぎる、遅すぎる(too little, too late)」ことへの対処として、のれんの減損テストを改善する議論がずっと継続していました。その議論では、のれんの償却が積極的に取り上げられている印象はありませんでした。

しかし、現行の枠組みを大きく変更する新アプローチ導入を断念する事態を経て、のれんの償却導入が「苦肉の策」として急浮上し、議論の流れが変わっていきました。結局、のれんの減損テストを改善することができない以上、自動的な償却処理であってものれんの残高を減らす処理を適用することで、巨額の減損損失を回避できるではないか。償却処理に一定の役割を見出す意見が見直されるようになってきました。

議論の最終局面では、のれんの性質をどのように捉えるかという問題に突き当たる指摘が多かったです。のれんは、複雑な性質を有するものの、多くの場合は償却資産として扱うべきであるとする意見や、のれんは擬制的な資産に過ぎないという見解も聞かれ、通常の審議ではあまり見られないような極端な意見の割れ方をしていました。

それでも、議論が収斂されていくにつれ、

「のれんは無限に価値が存続するわけはなく、ほとんどの場合、時間の経過と共に価値は減少していくと考えられるが、耐用年数は恣意的にならざるを得ない」

という見解が共有されていったようでした。

最後の投票では、償却の再導入に反対が8票、賛成が6票となり、僅差での否決となりました。

この決定を受けて、DPでは、のれんの償却の再導入に対する賛成と反対の両論を併記したうえで、再導入を行わない提案が行われることになります。

会議では、IASBがリーダーシップをとり、DPでは自己の立場を明確にした提案を行うべきという考えのもと決定が下されました。審議期間は長くなりましたが、その他の提案事項も含め、ようやくIASBの意見がまとまったことになります。DPは2019年末近辺に公表される予定ですが、IASBの提案に対し、さまざまな意見が寄せられるのではないかと思います。

イージフ 野口

2019年7月5日金曜日

IASB、のれんについて年次の減損テスト軽減を検討

IASBが現在取り組んでいるのれんと減損プロジェクトでは、企業結合に関する

「より適切な開示」

がひとつ大きな目的として掲げられています。しかしそれだけではなく、企業からの要望であるのれんの減損テストの手続軽減も取り下げられてはおらず、議論が続けられています。

どれだけ軽減されるのか、プロジェクト当初の提案に比べると範囲はだいぶ縮小した印象ですが、年次で強制されているのれんの減損テストの実施を免除するという提案は、影響が大きいところであり、注目されています。

2019年5月のIASB会議では、この年次の減損テストが取り上げられました。この時のスタッフの提案は、年次ののれんの減損テストを免除し、減損の兆候のあるときにのみ減損テストを行う、というものです。

その提案に対し、会議では慎重な意見が相次いでいました。

これまでプロジェクトでは、減損損失の認識が「少なすぎる、遅すぎる(too little, too late)」に対処しようとしてきたのに、年次の減損テストを免除してしまっては逆効果であり、簡素化すべきでないという反対意見も根強い印象でした。

しかし、むやみに手続を厳格化することも、望ましいことではありません。議長は、実際に直面している問題は「遅すぎるうえに、巨額になる (too late, then a lot)」と指摘し、簡素化により減損テストの有効性を悪化させるかは簡単に判断できないという認識を共有していました。

議論で特に興味深かったのは、米国基準についての言及が目立ったことです。米国基準では2011年の修正で、減損の兆候の判定のみで減損テストを省略できる任意規定が設けられました。この規定を選択すると、企業は定性的評価により、のれんの公正価値が簿価を下回る可能性が50%超であると判断した場合、減損テストを省略することができます。この規定に関心を持ち、参考にすべきと考える理事は多いようでした。

ただし、米国基準における減損の兆候はIFRSと似ているものの、内容は異なると考えられます。米国基準では、可能性が50%超であるかという基準がありますが、IFRSではのれんが減損している可能性を示す兆候の有無を評価します。また、のれんの簿価と比較する価値がIFRSでは使用価値であるのに対し、米国基準では公正価値である点など、米国基準の規定を参考にする際には留意しなくてはなりません。

のれんの減損テストに関する改訂については、個々の内容をそれぞれ検討するのでは不十分であり、一つのパッケージとして検討する必要があり、この問題を単体で扱うべきではないという指摘もなされました。

議長からはこの問題はIASBの信頼に関わる非常に重要な問題であるという発言もあり、IASBは慎重な判断が求められています。しかし、冒頭でも触れたように、手続の簡素化については当初よりもだいぶ範囲が狭まってしまっていて、現在の提案については基本的に実現を目指して検討が進められるのではないかと思います。6月の会議ではどの予備的見解をディスカッション・ペーパーに含めるべきかを判断し、ディスカッション・ペーパーの公表は2019年後半に予定されています。


イージフ  野口

2019年6月5日水曜日

のれんと減損、新しい開示情報の検討に着手

IASBが進めているのれんと減損のプロジェクト、大きな方針転換があってから一時審議は中断していましたが、2019年4月のIASB会議から審議が再開されています。

のれんの話については注目している方も多いと思いますが、しばらく時間があいてしまったので、これまでの審議を簡単におさらいしておきたいと思います。

このプロジェクトで一番重要視されていた問題はのれんの減損テストでした。投資家からは「(減損損失の認識が)少なすぎる、遅すぎる」という批判があり、もっと減損テストを効果的なものにしてほしいという要求がありました。一方、企業からは減損テストの手続が複雑でありコストがかかりすぎるため、もっと減損テストを簡略化してほしいという全く逆の要望がありました。

この相反する要求の間で、バランスのとれた、有効な解決策を見つけるべく、長い議論が続けらてきましたが、結局、減損テスト自体を改善することは無理、という結論になりました。2018年7月の会議では、減損テストの有効性の向上については検討を行わないことが決定しています。なので、今後も減損テスト自体は存続することになります。

しかし、これだけ減損テストに問題があるのに何も打開策がないというのは示しがつきません。そこでIASBは、代替案を提示することにしました。

減損テストを通して投資家が知りたいと思っている情報を別の形で提供されるよう、開示を充実させるというアイディアです。

のれんの減損を通じて投資家が知りたい情報とは、端的には、企業結合の成否を事後的に評価するための情報と考えられています。

本格的な審議はこれからで、まだ採用の是非は問われていないのですが、以下のような情報開示が必要なのではないかとされています。


企業結合が発生した報告年度における追加開示項目


  • 企業結合の実行の根拠となる企業の戦略(企業の戦略と買収取引の関連性についての説明等)
  • 取得企業と非取得企業のシナジーに関する記述(シナジーの説明、金額(または金額の幅)とシナジーを生じさせるために必要なコストの金額(または金額の幅))
  • 取得日に認識した被取得企業の主な資産および負債の金額(財務活動による負債および年金負債等は区分する)
  • 取得日以降、取得企業の財務諸表に含まれている被取得企業の収益、営業利益(企業の取得に関連する取引および統合の費用を除く)および営業活動によるキャッシュ・フローの金額
  • 企業結合の主要な目的(企業結合を実行した結果、経営者が到達することを期待している目標)
  • 将来の報告年度において、企業結合の主要な目的の到達度を評価するために経営陣が使用する予定の評価指標


企業結合が発生した報告年度とその後少なくとも2報告年度における追加開示項目


  • 経営陣が使用する評価指標の実績値


実際には、多くの企業は現状でも要求される情報量の多さに不満を感じているという状況なのですが、IASBはより具体的な目的を設定し、投資家はどんな情報がどういう理由で必要なのか説明をすることで、企業に理解を促す方針となっています。

日本で話題になっていたのれんの償却の再導入も、今後の検討内容の一つになっています。

のれんの償却については、これまでの審議では減損テストの改善という、上記の議論の中で検討されてきていました。その議論の中では「償却処理は有効性には結びつくはずがない!」という意見が強く、審議を見ていても採用される余地を感じさせませんでした。

しかし現在は、コストの削減という観点で取り上げられています。ただ、手続きの簡素化だけでは説得力に欠けるので、「償却処理によるのれん残高の減少により、のれんの減損へのプレッシャーを軽減することができる」といった他の長所も紹介されています。

米国基準との関係もあり議論内の様子だけで判断することはできませんが、のれんの償却も過去の審議よりは真剣に取り上げれらるのではないかと思います。

まだ具体的な決定事項がない段階の検討内容ですが、議論の方向性も含め幅広く紹介していきたいと思います。


イージフ  野口

2019年5月8日水曜日

IFRSで特別損益の表示を導入。どのような開示になるのか

現行のIFRSでは、非経常項目や特別項目を区分して表示することは禁止されていることはご存知の方が多いと思います。「経常」とか「特別」とか、恣意性の入る余地があまりにも多いと考えられてきたからです。

しかし実際には、経常的に発生しない項目であるか否かの情報は投資家からの要望が以前からありました。そこで現在進行中の基本財務諸表プロジェクトでは、通例でない項目の開示を検討することで合意されています。

会議では「通例でない項目」という言葉が提案されていて、次の定義が支持されています。

通例でない項目とは、類似の項目が将来の数報告年度において発生しないことが合理的に予想できるため予測価値が限定的な収益または費用とする

「通例ではない」とは、性質、金額、頻度の3つの側面があるという考えを踏まえています。

定義の言葉をもう少し詳しくみておきたいと思います。


  • 「将来の数報告年度」とは

他の基準で見られる「予想し得る将来の報告年度」とはあえて異なる表現を採用しています。これは通例であるか否かの判断に、予想し得る将来までを予測の範囲とするのは現実的ではないという配慮があります。


  • 「合理的に予想できる」とは

これは他の基準でも使用されている表現です。他基準と同様のレベルの発生可能性を要求することを明確にしようとしています。


  • 「予測価値が限定的」とは

当該事象または取引が将来の事象を評価するときに有用ではないことを意味しているわけですが、これは概念フレームワークの考え方に基づいています。


また、会議では公正価値を含む現在の価値で測定することが要求されている項目の再測定から生じた利得または損失は一般的に通例ではない項目に分類すべきではない旨を明記することとなっています。

通例でない項目の開示は注記となります。性質別の費用区分に関連づけ金額を表示(図表のような表示方法が想定されています)し、取引の説明の記載も要求することとなっています。


P/Lの内容を充実させることに重点を置いている時点で、現在のIASBの考え方は過去のB/S重視とは大きく違うわけですが、 P/L重視のスタンスが強まるとやはりそもそもあった日本基準の考え方に近いものになってくるようにも感じられます。IFRSもそれほど「遠い存在」に考える必要はないのではないかもしれません。

今後の動向も追っていきたいと思います。


イージフ  野口